親の認知症診断後30日でやること|本当に急ぐのは2つだけ

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「認知症です」と言われた帰り道。
何から手をつければいいのか、分からないまま、ここに辿り着いたのだと思います。

最初に、正直なことを書きます。30日で、介護体制は完成しません。要介護認定の結果すら、まだ出ていない頃です。

それでも「最初の30日」に意味がある理由は、はっきりあります。この時期にしかできないことが、2つあるからです。

リハウルフ
こんにちは、理学療法士のリハウルフです。訪問リハビリ12年、認知症の方とご家族に数え切れないほど関わってきました。だからこそ、きれいごとではなく、順番の話をします。
「診断直後」にしかできない2つのこと
  1. 判断能力があるうちの、お金と法律の準備 任意後見も家族信託も、本人に判断能力があるうちしか結べません。進行してからでは、選択肢が消えます。
  2. 新しい薬の検討(対象になるのは早期だけ) レカネマブ・ドナネマブは、軽度の段階でしか使えません。進行すると、対象から外れます。

逆に言えば、介護サービスは急いでも1ヶ月半は動きません。そこで焦る必要はありません。

診断の前段階(受診すべきか迷っている)の方は、この記事はまだ早いかもしれません。まず主治医に相談してください。

目次

Day1〜3|「認知症」だけでは、何も分からない

診断書に「認知症」とだけ書かれていたら、もう一度、病院に聞いてください。認知症は、病名ではなく状態の名前です。原因の病気によって、薬も、対応も、進み方も、まったく違います。

タイプ家族が知っておくこと
アルツハイマー型最も多い。新しい薬(レカネマブ等)の対象になりうるのは、このタイプの早期のみ。
レビー小体型薬に過敏。特に抗精神病薬で重い副作用が出ることがあります。
幻視(いない人が見える)、調子の波、パーキンソン症状。
「幻視を訴えたから精神科で薬を」が、命に関わることがあるタイプです。
血管性脳梗塞などが原因。再発予防がそのまま進行予防になります。
まだら(できる時とできない時の差が大きい)。
前頭側頭型物忘れより先に、性格や行動が変わる。万引き等で発覚することも。
叱っても止まりません。症状です。
リハウルフ
タイプを聞かずに帰ってしまう家族が、本当に多いです。特にレビー小体型は、知らずに薬を使って悪化させてしまう例があります。ここは遠慮せず、必ず確認してください。

医師に聞く3つのこと

  • タイプは何ですか?(上の4つのどれか)
  • 進行の程度は? 軽度・中等度・重度のどのあたりか
    「MMSEは何点でしたか」と聞くと、具体的な答えが返ってきます
  • 治せる原因は、除外されていますか?
    正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下・ビタミン欠乏など、治療で改善しうるものが隠れていることがあります

新しい薬について

レカネマブ(レケンビ)・ドナネマブ(ケサンラ)は、アルツハイマー病の進行を遅らせることを狙う薬です。従来の薬とは仕組みが違います。

ただし、誰でも使えるわけではありません。対象はアルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)または軽度の認知症で、アミロイドβの蓄積がPET等で確認できることが条件。MMSEにも基準があります(おおむねレカネマブ22〜30点、ドナネマブ20〜28点)。MRIでの経過確認も必要で、扱える医療機関が限られます。

「治す薬」ではありません。副作用(脳浮腫・微小出血など)もあり、費用も高額です。それでも、検討できるのは早期のうちだけなので、「うちの親は対象になりますか」と聞くこと自体には意味があります。聞かないまま進行して、対象から外れるのが一番もったいない。

Day3〜7|要介護認定を、とにかく早く出す

ここが、この30日で最も「早さ」が効く手続きです。理由は単純で、時間がかかるからです。

結果が出るまで、1ヶ月以上かかります

要介護認定は申請から原則30日以内に結果を出すことになっています。しかし全国平均は約40日という調査もあり、地域によってはさらに延びます。

つまり、Day5に申請しても、結果が届くのはDay45前後。「30日で介護体制を作る」記事を読んで焦る必要はありません。物理的に無理だからです。

窓口は市区町村の介護保険担当課、または地域包括支援センター。どこにあるか分からなければ、「(市区町村名) 地域包括支援センター」で検索すれば出ます。電話1本で、その日のうちに動き出せます。

認定調査で、家族が必ずやること

認知症の認定調査には、決定的な落とし穴があります。本人が、調査員の前だけ「しっかり」してしまう。

「お名前は?」「今日は何日ですか?」——プライドで、普段できないことを気丈に答えてしまう。結果、実態より軽い介護度が出ます。認知症の家族が最も損をするポイントです。

対策:困りごとを「紙」で渡す

調査に立ち会い、本人の前で言いにくいことは、メモにして調査員に渡してください。

書くのは「頻度」と「具体例」です。

  • ❌「よく物忘れをする」
  • ⭕️「週3回、鍋を火にかけたまま忘れる。今月2回焦がした
  • ⭕️「夜中に2〜3回起きて外に出ようとする。先月、警察に保護された

いい格好をしたくなるのは、本人も家族も同じです。でもここは、一番困っている日を基準に伝えてください。

リハウルフ
調査員も、1回の訪問で全部は見抜けません。紙で渡された情報は、ちゃんと調査票に反映されます。遠慮する場面ではないです。

Day7〜20|「判断能力があるうち」のラストチャンス

認定結果を待っている間が、この30日の本番です。介護サービスは待つしかありませんが、お金と法律の準備は、待つと選択肢が減ります。

リハウルフ
「お金の話をするのは、親に悪い気がして」——よく聞きます。でも、切り出せなくて詰まったご家族のほうを、私はずっと多く見てきました。

認知症が進行して判断能力を失うと、こうなります。

口座が凍結されうる金融機関が本人の意思確認をできないと判断した場合、家族でも引き出せなくなります。親の介護費用を親のお金で払えない、という事態。
実家が売れない施設入居費を捻出するために自宅を売る——本人に意思能力がないと、できません。成年後見人を立て、家庭裁判所の許可が要ります(居住用不動産の場合)。
任意後見・家族信託が結べないこれらは契約です。契約は、判断能力がないと結べません。診断直後の今が、実質的な締め切りです。

診断がついた=即座に契約無効、ではありません。軽度なら、まだ間に合うことが多い。ただし判断は専門家(司法書士・弁護士)と医師の領域です。「まだ大丈夫」と思っているうちに動いてください。

最低限、今月中にやることはこれだけです。

  1. 親の資産を把握する 口座がどこに何個あるか、年金額、保険、不動産、そして借金。本人に聞けるうちに聞く。
  2. 通帳・印鑑・保険証券の場所を確認する 「どこにあるか分からない」が、後で一番効きます。
  3. 専門家に相談だけしておく 任意後見・家族信託・代理人カード。やるかどうかは後で決めていい。選択肢が生きているうちに聞くことに意味があります。

ここで動けるかどうかが、5年後の家族の消耗を決めます。「まだそんな段階じゃない」と思う今が、いちばん動ける時期です。

とはいえ、任意後見と家族信託のどちらが合うかは、資産の中身と家族構成で変わります。「実家をどうするか」まで含めて考えると、素人判断は危険です。まず無料相談で、自分の家に何が使えるのかを聞くだけでも違います。

運転免許は、別枠で急ぐ

認知症と診断されると、道路交通法上、運転免許は取消しまたは停止の対象になります。これは家族の判断ではなく、制度の話です。

そして事故を起こしてからでは、賠償が家族に及びます。「そのうち説得しよう」で先延ばしにできる問題ではありません。

Day20〜30|ケアマネを決め、家族で話す

認定結果はまだ出ていませんが、ケアマネジャー選びは先に動けます。

認知症の介護では、ケアマネの当たり外れが、その後の数年を左右します。地域包括支援センターで居宅介護支援事業所のリストをもらい、電話して「認知症のケアプランを多く担当している方はいますか」と聞いてください。合わなければ、後から変更できます。最初の1人と、一生付き合う必要はありません。

認定を待たずにサービスを使いたいとき

「40日も待てない、今すぐデイサービスが要る」という状況はあります。その場合、暫定ケアプランという方法があります。見込みの介護度でケアマネにプランを作ってもらい、認定前からサービスを使う。認定の効力は申請日にさかのぼるので、後から保険給付が適用されます。

暫定ケアプランのリスク
  • 結果が「非該当(自立)」だと、使った分は全額自己負担になります。
  • 想定より軽い介護度が出た場合、限度額を超えた分は全額自己負担。

認知症は身体が元気なことが多く、思ったより軽い介護度が出やすいのが実情です。使う前に、ケアマネと「最悪いくらになるか」を必ず確認してください。

きょうだいと話す

この時期に一度、話しておいてください。もめる原因は、だいたい決まっています。近くに住む人が全部やり、遠くの人が後から口を出す。

決めるのは「誰が何をやるか」ではなく「お金をどこから出すか」と「誰が決定権を持つか」です。役割分担は状況で変わりますが、この2つが曖昧なままだと、必ず揉めます。

やってはいけない5つのこと

間違いを訂正する「違うでしょ、昨日も言ったでしょ」
本人には、忘れた自覚がありません。訂正は「責められた」という感情だけを残します。事実は消えても、嫌な気持ちは残ります。
仕事を辞める介護離職は、いちばん後戻りできない選択です。収入が消え、社会との接点も消え、逃げ場がなくなる。
まず介護休業制度(通算93日)を使ってください。
施設を即決する診断直後の混乱の中で決めた入居は、ほぼ後悔します。今日決める必要は、ありません。
一人で抱える認知症介護は年単位です。抱えた人から壊れます。
本人に隠れて全部決める軽度のうちは、本人に決める力が残っています。「どこで、どう暮らしたいか」を聞けるのは今だけです。
リハウルフ
訂正をやめるだけで、家の空気が変わったご家族がいます。事実を正すより、機嫌よく過ごしてもらうほうが、結果的にうまくいきます。

30日後、まだ何も終わっていません

30日目の時点で、おそらくこうなっています。認定結果はまだ届いていない。サービスも始まっていない。親の症状も、特に良くなっていない。

それで、正常です。失敗ではありません。

この30日でやったのは、時間制限があるものを、締め切り前に片付けたことだけです。それで十分です。認定が出れば、ケアマネが入り、そこからは一人で背負わなくてよくなります。

そして、ここは正直に書きます。「適切なケアで5〜10年、本人らしく暮らせる」と断言することは、私にはできません。進み方には個人差が大きく、タイプによっても違います。

ただ、12年間見てきて確実に言えることが一つあります。家族が余裕を失うと、本人の状態も崩れます。穏やかな家族のもとにいる方は、穏やかです。だから、家族が休むことは、本人のためのケアでもあります。

リハウルフ
診断された日から、ご家族は「介護者」になろうと頑張りすぎてしまいます。でも、親にとってはあなたは今も子どもです。頑張るより、続けてください。

よくある質問

本人に診断を伝えるべきですか?
正解はありません。ただ、軽度のうちは本人も薄々気づいていることが多いです。隠されるほうが不安だ、という方もいます。医師に「本人にどう伝えるのがよいか」を相談してください。
障害者控除は使えますか?
要介護認定を受けただけでは対象になりません。市町村長等の認定が別途必要で、認定基準日は12月31日です。診断直後にやる手続きではなく、確定申告期の話です。
診断されると介護保険料は上がりますか?
上がりません。介護保険料は所得等で決まります。診断そのものは、保険料には関係ありません。
親が診断を受け入れません
よくあることです。説得より、「困っていること」から入るほうが動きます。「認知症だから」ではなく「最近しんどそうだから、助けてもらおう」。

まとめ

📌 診断後30日で、本当にやること
  1. タイプを確認する(Day1〜3) 「認知症」だけでは何も分かりません。レビー小体型なら薬に要注意。
  2. 要介護認定を申請する(Day3〜7) 結果まで40日前後。早さがそのまま効く、唯一の手続きです。
  3. 認定調査には立ち会い、困りごとを紙で渡す 本人は調査員の前でしっかりしてしまいます。
  4. お金と法律を、判断能力があるうちに(Day7〜20) ここが本番。待つと選択肢が消えます。
  5. 早期なら、新薬の対象か聞く 進行すると、対象から外れます。
  6. 30日で完成しなくていい 認定はまだ出ていません。それが普通です。

今日できることは、一つだけで十分です。地域包括支援センターに電話する。そこから先は、専門職が一緒に考えてくれます。

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参考にした情報(公的機関)

診断・治療・薬に関する判断は必ず主治医に、法的手続きは司法書士・弁護士等の専門家に、介護サービスはケアマネジャー・地域包括支援センターにご相談ください。
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。

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この記事を書いた人

リハウルフのアバター リハウルフ 理学療法士/ケアマネ

理学療法士(2010年取得・16年目)。通所リハビリ、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護医療院、回復期リハビリ病棟で勤務。うち12年が在宅の現場で、訪問したお宅は1,000件を超えます。『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック』監著・編集。2026年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得しました。

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