認知症の親を詐欺から守る|被害額“倍増”の今、家族がやること

当ページのリンクには広告が含まれています。

「うちの親に限って、騙されるわけがない」——そう思っていませんか。

その油断が、いちばん危ない。特殊詐欺の被害額は、いま過去最悪を更新し続けています。

リハウルフ
こんにちは、理学療法士のリハウルフです。訪問の現場で、詐欺に遭ったご家族、遭いかけたご家族を、何度も見てきました。他人事ではありません。

先に、この記事の結論を言います。

この記事で分かること
  • 被害額は1年で倍増。手口も「ニセ警察」へと変わっている
  • 認知症の親が「騙されたと気づけない・隠す」という現実
  • 家族が最初に気づく“被害のサイン”はどこに出るか
  • いちばん効く予防と、お金を守る二重の壁(資産凍結対策)
目次

いま、何が起きているのか

まず、最新の数字を見てください。多くの人が思っているより、状況はずっと深刻です。

約1,423億円令和7年の被害総額(前年比ほぼ倍増)
27,8321年間の認知件数
約6被害額のうち65歳以上が占める割合

被害総額は、前の年からほぼ倍に増えました。そして被害者の中心は、やはり高齢者です。認知件数の約半分、被害額の約6割を、65歳以上が占めています(警察庁・令和7年確定値)。

いま主流は「ニセ警察詐欺」

かつての「オレオレ詐欺」に加え、最近は警察官や検察官を名乗り、「あなたの口座が事件に使われた」と脅して現金を奪う手口が急増しています。令和7年は、この手口だけで被害額が1,000億円を超え、特殊詐欺全体の約4割を占めました。「息子の声じゃないから大丈夫」では、もう防げないのです。

リハウルフ
手口は毎年変わります。「昔の詐欺の知識」で身構えていると、新しい手口にやられます。まず“今”を知ってください。

認知症の親が、特に危ない理由

認知症があると、詐欺のリスクは跳ね上がります。理由は、判断力の問題だけではありません。

認知症の親が狙われやすい3つの理由
  • 「おかしい」と気づく力が弱る
    話のつじつまが合わなくても、違和感を持ちにくくなる
  • 騙されたことを、覚えていない・気づけない
    だから被害が何度も繰り返され、発覚が遅れる
  • 被害を隠す・言えない
    「情けない」「叱られる」と感じて、家族に言わない。ここが最大の壁

特に3つ目が厄介です。現場で見ていても、本人が「大丈夫、何もない」と言い張るケースは本当に多い。プライドを傷つけまいと隠すのです。中には、家族に迷惑をかけたくない一心で、被害を重ねてもなお口をつぐむ方もいます。だから、本人の言葉を待っていては、発見が遅れます。家族の側から、サインを見にいく必要があります。

家族が気づく「被害のサイン」

本人が言わなくても、被害は“モノ”に痕跡を残します。実家に行ったとき、さりげなくここを見てください。

  • 通帳の不自然な出金
    まとまった金額が、短い間隔で何度も引き出されていないか
  • 身に覚えのない請求書・督促状
    「未払い料金」「訴訟予告」などの郵便物が増えていないか
  • 見慣れない高額な商品や、大量の同じ品物
    健康食品、羽毛布団、浄水器…。訪問販売の痕跡
  • 知らない業者からの電話・訪問が増えた
    一度カモになると、名簿が業者間で共有されることがある
  • ATMやコンビニに、頻繁に行くようになった
    電子マネーを買わされているケースも
リハウルフ
「最近、通販の箱が増えたな」——その違和感、放置しないでください。詐欺は、生活の隅っこにサインを残します。

いちばん効くのは「電話に出させない」

予防策はいろいろありますが、現場の実感として最も効果が高いのは、そもそも詐欺の電話を親に取らせないことです。特殊詐欺の多くは、電話から始まるからです。

今日からできる、電話対策

留守番電話を常にオンにする(犯人は録音を嫌って切ることが多い)
迷惑電話防止機能つきの電話機に替える(自動で警告・録音)
「知らない番号には出ない」を家族のルールにする
・自治体によっては、迷惑電話防止装置を無料・低額で貸し出している

「電話くらい」と思うかもしれませんが、入口を塞ぐのが、いちばん確実です。まずは、お住まいの自治体に「迷惑電話防止装置の貸し出しはありますか」と問い合わせてみてください。犯人は「録音されている」と分かると、それ以上かけてこないことが多いのです。

リハウルフ
どんな立派な心構えより、留守番電話のスイッチ一つのほうが効くことがあります。まず物理的に、電話を遠ざけてください。

認知症の進行度に合わせた対策

対策は、親の状態に合わせて段階的に。一気にやろうとすると、本人の反発を招きます。

まだしっかり電話対策+情報共有。「こんな詐欺があるらしいよ」と一緒に話題にする。元気なうちに、後述のお金の対策も
軽度大きなお金の管理を、少しずつ家族と一緒に。通帳の把握、キャッシュカードの限度額引き下げ
中等度以降現金・通帳・印鑑の管理を家族が担う。成年後見制度など、法的な仕組みの検討も

お金を守る「二重の壁」を知っておく

ここは、詐欺対策と切り離せない大事な話です。認知症の親のお金には、実は「二重のリスク」があります。

2つのリスク

詐欺で奪われるリスク
認知症が進むと、口座が凍結されるリスク
(本人の判断力が失われたと銀行が判断すると、引き出しや解約ができなくなる。家族でも、勝手には動かせません)

詐欺から守ろうとお金の管理を考えるなら、同時に「凍結」への備えも必要になります。このとき使えるのが、成年後見制度家族信託といった仕組みです。

成年後見制度判断力が衰えた本人に代わり、後見人が財産を管理・保護する。詐欺被害の取り消しができる場合があるのが強み。家庭裁判所が関与する
家族信託元気なうちに、財産管理を家族に託しておく契約。認知症が進んでも、家族が柔軟に資産を動かせる

どちらが向くかは、家庭の事情や資産の状況で変わります。共通して言えるのは「早いほど選択肢が多い」ということ。特に家族信託は、本人がしっかりしているうちしか契約できません。

「何から手をつければいいか分からない」という場合は、家族信託を専門にサポートするサービスに、一度相談してみるのも手です。制度は複雑なので、専門家に交通整理してもらうと、判断が早くなります。

もし、被害に遭ってしまったら

「もう遅い」と諦めないでください。早く動けば、取り戻せる可能性があります。

  1. ① すぐに警察へ(110番/#9110) 緊急でなければ、警察相談専用電話「#9110」へ。被害届の相談ができます。
  2. ② 振込先の金融機関に連絡する 振込直後なら、口座を凍結して被害回復につながることがあります。一刻を争います。
  3. ③ 訪問販売なら、クーリング・オフ 訪問販売や電話勧誘販売は、原則8日以内なら契約を解除できます。消費者ホットライン「188(いやや)」へ。
  4. ④ 再発を防ぐ 一度狙われた家は、また狙われます。電話対策・お金の管理を、この機会に見直しましょう。

そして、親を責めないでください。「なんで騙されたの」と責めると、次から被害をますます隠すようになります。「教えてくれてありがとう、一緒に取り戻そう」——この姿勢が、次を防ぎます。

よくある質問

遠方に住んでいて、親を見守れません
電話対策と、定期的な連絡が基本です。迷惑電話防止装置を設置し、「変な電話やハガキが来たら、まず私に相談してね」を口ぐせにする。見守りサービスや、地域包括支援センターの活用も検討してください。
親が「対策なんて必要ない」と嫌がります
正面から「あなたが危ない」と言うと反発します。「最近こういう詐欺が流行ってるんだって。うちも気をつけようね」と、“自分ごと”ではなく“世間の話”として持ちかけると、受け入れられやすいです。
成年後見と家族信託、どちらがいいですか?
状況によります。すでに判断力が低下しているなら、選べるのは成年後見制度です。元気なうちなら、家族信託という柔軟な選択肢もあります。費用や手続きが異なるので、専門家に相談して決めるのが確実です。
口座はもう凍結されてしまいました
凍結後に取れる主な手段は、成年後見制度の申し立てです。手続きに数か月かかることもあるため、「凍結される前の備え」が、本当は何より大事です。詳しくは、下の関連記事も参考にしてください。

まとめ|「予防」が、最強の対策

この記事の要点
  • 被害額は1年で倍増。手口は「ニセ警察詐欺」が主流に
  • 認知症の親は被害を隠す。家族がサイン(通帳・請求書・不審な品)を見にいく
  • いちばん効く予防は「電話に出させない」こと
  • お金には「詐欺」と「凍結」の二重リスク。成年後見・家族信託で備える
  • 遭ってしまったら、すぐ警察(#9110)・金融機関・消費者ホットライン188
  • 親を責めない。責めると、次から隠される

詐欺対策で大事なのは、「起きてから」ではなく「起きる前」に動くこと。電話対策も、お金の備えも、親が元気なうちほど、打てる手が多いのです。

そして——これは、親を守ると同時に、あなた自身の資産と生活を守ることでもあります。詐欺で親のお金が消えれば、その先の介護費用に響くのは、家族だからです。

リハウルフ
「まだ大丈夫」と思っている今こそ、動きどきです。一つずつでいい、今日できることから始めてください。

あわせて読みたい

参考にした情報(公的機関)

※本記事の統計は、警察庁「令和7年確定値」にもとづきます(2026年7月時点)。手口や被害状況は年々変化します。迷惑電話防止装置の貸し出し有無は自治体により異なるため、お住まいの市区町村にご確認ください。制度の詳細は、専門家や公的機関にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

リハウルフのアバター リハウルフ 理学療法士/ケアマネ

理学療法士(2010年取得・16年目)。通所リハビリ、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護医療院、回復期リハビリ病棟で勤務。うち12年が在宅の現場で、訪問したお宅は1,000件を超えます。『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック』監著・編集。2026年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得しました。

目次