親の介護が始まって、「仕事を休まなきゃ」と思ったとき。まず知っておくべき制度が介護休暇と介護休業です。名前は似ていますが、まったくの別物です。
30秒で結論を言います。介護休暇は「スポットで数日休む」制度、介護休業は「まとまって休む(最大93日)」制度。給付金があるのは介護休業だけです。
そして、この記事でいちばん伝えたいのは——介護休業の93日は「自分が親を介護するための休み」ではないということ。ここを取り違えて、93日を使い切って燃え尽き、結局は離職……という失敗を、私はケアマネとして何度も見てきました。93日は「介護に専念する日」ではなく「仕事と両立できる体制を作る準備期間」です。この視点で、2つの制度の正しい使い方をお伝えします。
リハウルフ結論|介護休暇と介護休業の違い早わかり
| 項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
|---|---|---|
| 用途 | 突発的な用事にスポットで | 介護の体制づくりにまとまって |
| 日数 | 年5日(対象家族2人以上で年10日) | 対象家族1人につき通算93日(3回まで分割可) |
| 取り方 | 1日・時間単位 | まとまった期間 |
| 給付金 | なし(給与は会社規定による) | あり(賃金の67%/雇用保険) |
| 申請先 | 勤務先 | 勤務先+(給付金は会社経由でハローワーク) |
ざっくり言えば、「通院の付き添いで1日休む」なら介護休暇、「入院〜退院で介護の段取りを整える1〜3か月」なら介護休業。まずこのイメージを持ってください。
介護休暇とは|スポット対応の味方
介護休暇は、年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで、1日または時間単位で取れる休みです。急な用事にピンポイントで対応するための制度です。
介護休暇が向く場面
- 親の通院の付き添い
- 要介護認定の認定調査や、ケアマネとの契約・打ち合わせ
- ケアマネジャーとの面談、サービス担当者会議
- ケアマネや役所への手続き・急な呼び出し
注意点は、賃金の支払い義務がないこと。有給の年次休暇とは違い、無給になるか有給になるかは会社の規定によります。まずは就業規則を確認してください。時間単位で取れるので、「午前だけ通院に付き添う」といった使い方ができるのが強みです。
介護休業とは|「体制を作る」ための休み
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れるまとまった休みです。そして給付金(賃金の67%)が出ます。ここまでは他サイトも書いています。問題は、この93日を何に使うかです。
厚生労働省は、介護休業の目的を「介護の体制を構築するために一定期間休業するもの」と明記しています。つまり、自分が手を動かして93日間ずっと親を介護するための休みではありません。
その間にケアマネを見つけ、要介護認定を受け、デイやヘルパーを組み、「自分が仕事に戻っても回る仕組み」を作る——これが正しい使い方です。
ここを取り違えると、こうなります。「自分が全部やろう」と93日フルに介護に費やし、心身が限界に。復帰しようにも体制が何もできておらず、結局は離職。これが介護離職のいちばん多いパターンです。93日は、あなたが倒れるための時間ではなく、倒れない仕組みを作るための時間です。



介護休業給付金|賃金の67%が出る
介護休業中は会社からの給与は原則ありませんが、雇用保険から休業開始時賃金の67%が「介護休業給付金」として支給されます(一定の加入要件あり)。
給付金で知っておくこと
- 申請は基本会社経由でハローワークへ(自分で全部やる必要はない)
- 振り込まれるのは休業終了後。休業中の生活費は、いったん手元資金でしのぐ想定を
- 支給額には上限があり、毎年見直される(高収入の人は67%より目減りする場合あり)
「67%もらえるから安心」ではなく、入金は後払いという点に注意してください。給付金の細かい計算や申請の流れは介護休業給付金の使い方|賃金67%・93日を「体制づくり」に充てるで詳しく解説しています。
2025年4月から変わった|知らないと損する新ルール
ここは特に新しい情報です。2025年4月1日施行の育児・介護休業法改正で、働く家族に有利な変更がありました。会社側の義務が増えたのがポイントです。
2025年4月からの主な変更
- 入社半年未満でも介護休暇が取れる(勤続6か月未満を除外する仕組みが廃止)
- 介護に直面したと申し出た社員に、会社が制度の個別周知・意向確認をする義務
- 40歳など早い段階での情報提供が会社の義務に
- 研修・相談窓口の設置など環境整備が会社の義務に
- 介護のためのテレワークが会社の努力義務に追加
言い換えると、「制度を教えてくれない・使わせない会社」は、もう法律違反だということ。「介護で休みたい」と申し出れば、会社は制度を説明する義務があります。遠慮する必要はありません。堂々と相談してください。
ケース別|あなたはどっちを使う?
| あなたの状況 | 使う制度 |
|---|---|
| 親の通院に付き添いたい/認定調査に立ち会いたい | 介護休暇(1日・時間単位) |
| 親が入院。退院までに介護の段取りを整えたい | 介護休業(まとまって体制構築) |
| 日々の残業を減らして介護時間を確保したい | 所定外労働の制限・時短勤務 |
| 通院や見守りのため、月に数回スポットで抜けたい | 介護休暇+テレワーク |
介護休暇と介護休業は併用できます。「入院時に介護休業で体制を作り、その後は介護休暇で通院に対応」といった組み合わせが現実的です。さらに、残業免除・時短勤務・深夜業の制限といった権利もあり、休むだけでなく働き方そのものを調整する選択肢もあります。
対象になる家族・要件
対象家族(同居・扶養の有無は問わない)
配偶者(事実婚を含む)・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母。義理の親も対象です。
介護休業の対象は、「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」の家族です。要介護認定が出ていなくても、この状態にあたれば対象になり得ます。「まだ認定がないから使えない」と諦めず、会社やケアマネに確認してください。
休業中こそ「体制」を作る|具体的な段取り
では、介護休業の期間に何をすればいいか。ゴールは「自分が仕事に戻っても、親の生活が回る状態」を作ることです。
- ① 地域包括支援センター/ケアマネにつながる介護の相談窓口はここが起点。要介護認定の申請を進めます。
- ② 要介護認定を受け、ケアプランを作るデイサービス・訪問介護など、使えるサービスを組み立てます。
- ③ 自分が抜けても回る「担い手」を配置するサービス・親族・保険外サービスで、平日日中の穴を埋めます。
- ④ 復帰後の働き方を会社と相談時短・テレワーク・残業免除など、続けられる形を決めます。
特に③が難所です。介護保険サービスだけでは、平日日中の見守りや通院同行がカバーしきれないことが多い。「自分が仕事の日、誰が親を見るのか」——ここが埋まらないと復帰できません。介護保険で足りない部分は、家事や付き添いを頼める保険外の介護サービスで補うのも有効な一手です。休業中に一度試しておくと、復帰後の安心感が違います。
介護離職を避けるために
最後に、いちばん大事なこと。介護のために仕事を辞めるのは、できる限り避けてください。収入が絶たれるうえ、介護が終わっても元の働き方に戻れる保証はありません。そして——辞めても、親の介護がラクになるわけではないのです。
むしろ、仕事を続けながら制度とサービスで支える方が、経済的にも精神的にも持ちこたえられます。「辞める」を選択肢に入れる前に、介護休暇・介護休業・時短・テレワークを組み合わせて乗り切る道を検討してください。詳しくは介護離職を防ぐ方法|“辞めても親はラクにならない”現実と7つの手を読んでみてください。
よくある質問
- 介護休暇は有給ですか?
- 法律上は賃金の支払い義務がなく、有給か無給かは会社の規定によります。就業規則を確認してください。取得自体は権利として認められています。
- パート・契約社員でも使えますか?
- 一定の要件を満たせば使えます。2025年4月からは、介護休暇について勤続6か月未満を除外する仕組みが廃止され、入社直後でも取得しやすくなりました。詳細は会社に確認を。
- 介護休業の93日は一度に使い切らないとダメ?
- いいえ。対象家族1人につき3回まで分割できます。「入院時にまず1回、状態が変わったらまた1回」という使い方が可能です。
- 義理の親(配偶者の父母)の介護でも使えますか?
- 使えます。対象家族に配偶者の父母が含まれ、同居や扶養の有無は問われません。
まとめ|2つを使い分けて、辞めずに乗り切る
この記事の要点
- 介護休暇=スポットで年5日(2人なら10日)。介護休業=まとまって93日(3回分割可)。
- 給付金(賃金の67%)があるのは介護休業だけ。入金は後払い。
- 介護休業の93日は「自分が介護する日」ではなく「体制を作る準備期間」。
- 2025年4月改正で、会社に制度周知の義務。遠慮せず相談してよい。
- 辞めても親はラクにならない。制度とサービスで、続けながら支える。
介護休暇と介護休業は、あなたの仕事と生活を守るための「盾」です。使い方を間違えなければ、介護離職という最悪の選択を避けられます。カギは、休んで頑張ることではなく、休みを使って「頼れる体制」を作ること。まずは会社の就業規則を開き、地域包括支援センターに電話するところから始めてください。
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参考にした情報(公的機関)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています(2025年4月施行の改正を反映)。給付金の上限額などは毎年見直されるため、実際の申請時は勤務先・ハローワークの最新情報をご確認ください。









