成年後見制度とは|「困ってから」では遅い理由と後見人報酬の現実

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「認知症が進んで、親の口座からお金が下ろせなくなった」——そうなって初めて成年後見制度を調べ始めるご家族が、現場では大多数です。

結論から言うと、成年後見制度は「困ってから」使うと、選択肢がほとんど残りません。判断能力が落ちてから使えるのは「法定後見」だけで、見ず知らずの専門家が後見人につき、月々の報酬が親が亡くなるまで続く——このパターンに、私は何度も立ち会ってきました。

この記事では、理学療法士・ケアマネジャーとして認知症のご家族を支えてきた私が、制度の仕組みと費用に加えて、パンフレットに載らない「申し立てた後に起きる現実」と、そうなる前にやっておくべきことを、正直にお伝えします。

目次

なぜ成年後見制度が必要になるのか|30秒で

この記事の要点

  • 認知症が進むと親の口座が凍結され、本人のお金が使えなくなる
  • 解除には後見人が必要だが、専門家がつくと月報酬が一生続くことも
  • 自由度が高いのは判断能力があるうちの「任意後見」「家族信託」

金融機関は、口座名義人の判断能力が低下したと分かると、本人保護のために口座を事実上凍結します。こうなると、たとえ子どもでも親の預金から施設費や医療費を引き出せません。実家の売却もできません。この凍結を解くために必要なのが、成年後見人です。

リハウルフ

リハウルフ
「親のお金なのに使えない」。この状況に陥ってから相談に来る方が、本当に多いんです。

成年後見制度は「法定」と「任意」の2種類

成年後見制度は、大きく2つに分かれます。この違いを理解することが、この記事でいちばん大事な部分です。

項目法定後見任意後見
いつ使う判断能力が落ちた後判断能力があるうちに契約
誰が後見人家庭裁判所が決める自分で選べる
自由度低い(裁判所の管理下)比較的高い
始めるタイミング手遅れになりがち元気な今

ポイントは、任意後見は「判断能力があるうち」にしか契約できないこと。認知症が進んでからでは、選択肢は法定後見一択になります。だから「まだ元気」な今こそ、動く価値があるのです。

任意後見は「自分で後見人を選べる」制度

任意後見は、判断能力があるうちに「将来、自分が認知症になったら、この人に財産管理を任せる」と公正証書で契約しておく制度です。実際に判断能力が落ちたら、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選び、契約がスタートします。

最大のメリットは後見人を自分(=親本人)が選べること。信頼する子どもを指定しておけば、見ず知らずの専門家が突然入ってくる事態を避けられます。ただし、任意後見人には本人がした契約を取り消す「取消権」がない、監督人への報酬は発生する、といった注意点もあります。

法定後見の3つの類型|後見・保佐・補助

法定後見は、本人の判断能力の程度によって3つに分かれます。裁判所がどれに当たるかを判断します。

類型対象(判断能力)後見人等の権限
後見欠けているのが通常の状態ほぼすべてを代理
保佐著しく不十分重要な行為の同意・取消
補助不十分限定的な同意・代理

認知症がかなり進んだ状態だと、多くは「後見」に該当します。後見人は財産管理から契約まで幅広く代理できますが、その分、後述のとおり家庭裁判所の厳しい管理下に置かれます。

法定後見の手続きと費用

手続きの流れ

① 家庭裁判所へ申立て(本人・配偶者・四親等内の親族など)
② 書類提出・医師の診断書(必要なら鑑定)
③ 家裁の審理(おおむね2〜4か月)
④ 後見人の選任・開始(後見人は裁判所が決める)

費用の目安

項目金額の目安
申立手数料(収入印紙)800円〜(1件)
登記手数料(収入印紙)2,600円
医師の鑑定料(必要な場合)多くは10万円以下
専門家後見人への報酬月2万〜6万円程度(家裁が決定)

申立て自体の費用は数万円程度ですが、本当に効いてくるのは「後見人への報酬」です。専門家がついた場合、報酬は本人の財産から毎月支払われ、原則として親が亡くなるまで続きます。10年続けば数百万円になることもあります。

【現場のリアル】申し立てた後に「こんなはずでは」

ここが、多くの記事が書かない部分です。法定後見は「口座凍結を解く」目的で申し立てても、その後に想定外の現実が待っていることがあります。

よくある「こんなはずでは」

  • 家族がなれると思ったら、専門家が選ばれた(後見人を選ぶのは裁判所)
  • 月報酬が一生続く(目的を果たしても、原則やめられない)
  • お金の使い道が制限される(本人のため以外に使えない。孫への援助なども不可)
  • 選任まで数か月、その間お金が動かせない(施設費を子が立て替えるはめに)

私が担当したご家族でも、「口座を動かせるようにしたいだけ」で申し立てたところ、見ず知らずの司法書士が後見人につき、毎月の報酬が発生。目的は果たせたものの「一度始めたら途中でやめられない」と知って驚かれていました。制度が悪いのではなく、仕組みを知らずに使うと「こんなはずでは」になるのです。

リハウルフ

リハウルフ
法定後見は「本人を守る」ための制度。家族に都合よく使う道具ではない、と理解しておくと誤解が減ります。

もうひとつ現場で多いのが、親族間で意見が割れているケースです。「長男が財産を管理したい」「いや不安だ」ともめている状態で申し立てると、裁判所は中立性を重視してあえて第三者の専門家を選ぶことがあります。家族が後見人を望むなら、申立ての前にきょうだい間で意見をそろえておくことが欠かせません。

成年後見の3大デメリット

  • 原則やめられない:本人が亡くなるか回復するまで続く
  • 費用が続く:専門家後見人なら月報酬が発生し続ける
  • 柔軟な資産活用ができない:投資・生前贈与・積極的な運用は不可

特に「資産を柔軟に使えない」点は誤解されがちです。後見人の役割は本人の財産を守ることであり、増やしたり家族のために使ったりすることではありません。相続対策や不動産の組み替えを考えているなら、後見開始後はほぼ動けなくなります。

家族信託との比較|どちらを選ぶ?

資産凍結対策として、近年注目されているのが家族信託です。元気なうちに、財産の管理を信頼する家族に託しておく契約で、成年後見にはない柔軟さがあります。

項目法定後見家族信託
始める時期判断能力低下後元気なうち
財産を託す相手裁判所が決める自分で選ぶ家族
資産の柔軟な活用できない契約次第で可能
継続的な報酬専門家なら発生家族なら原則なし
身上監護(介護契約など)できるできない

ざっくりの使い分け

  • 資産の管理・活用が中心で、頼れる家族がいる → 家族信託が向く
  • 介護・入院の契約など身の回りの手続きも任せたい → 任意後見が向く
  • 両方の心配がある → 併用という選択肢もある

ただし家族信託は判断能力があるうちにしか契約できず、設計を誤るとトラブルの元になります。仕組みが複雑なので、まず専門家の無料相談で「わが家にどちらが合うか」の全体像を聞くのが、いちばんの近道です。

元気なうちにやっておく5つの準備

今からできる備え

  1. 親の資産を見える化する(口座・保険・不動産・借入を親子で共有)
  2. 親の希望を聞いておく(誰に任せたいか、お金の使い方の意向)
  3. 任意後見・家族信託を検討する(判断能力があるうちに)
  4. 専門家に無料相談する(司法書士・弁護士・信託の専門窓口)
  5. きょうだいと方針を共有する(後でもめないために)

この5つは、認知症が進む前しかできないものが含まれます。「まだ大丈夫」と先延ばしにして手遅れになるご家族を、現場でたくさん見てきました。会話ができる今が、動きどきです。

専門家への相談|無料相談を上手に使う

成年後見も家族信託も、素人判断で進めると失敗しやすい分野です。まずは司法書士・弁護士・家族信託の専門窓口の無料相談で、わが家の状況を伝えて選択肢を整理してもらいましょう。地域の地域包括支援センター成年後見センターでも相談できます。

成年後見制度に関するよくある質問

家族が後見人になることはできますか?
申立ての際に家族を候補にできますが、最終的に選ぶのは家庭裁判所です。財産が多い・親族間で意見が割れているなどの場合、専門家が選ばれる傾向があります。必ず家族がなれるとは限りません。
一度始めたら途中でやめられますか?
法定後見は、原則として本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます。「口座凍結を解く目的が済んだから終了」とはできません。この点は始める前に必ず理解してください。
もう認知症が進んでいます。家族信託は使えますか?
家族信託も任意後見も判断能力があるうちの契約が前提です。すでに進んでいる場合は法定後見が中心の選択肢になります。まずは専門家に現状を相談してください。

まとめ|「判断能力があるうち」がすべて

この記事のポイント

  • 困ってから使えるのは法定後見だけ。自由度が低い
  • 専門家後見人は月報酬が一生続き、原則やめられない
  • 柔軟に備えたいなら任意後見・家族信託(元気なうち限定)
  • まず親の資産の見える化と専門家相談から

成年後見制度は、認知症の親を守る大切な仕組みです。ただし「困ってから」では選択肢が狭まり、費用も自由度も不利になります。親と会話ができる今のうちに資産を見える化し、任意後見や家族信託も含めて専門家に相談しておく——それが、親のためにも家族のためにも、いちばん後悔の少ない備えです。

参考にした情報(公的機関)

※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。手続き・費用・報酬は家庭裁判所や地域により異なるため、申立て前に裁判所・専門家に最新の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

リハウルフのアバター リハウルフ 理学療法士/ケアマネ

理学療法士(2010年取得・16年目)。通所リハビリ、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護医療院、回復期リハビリ病棟で勤務。うち12年が在宅の現場で、訪問したお宅は1,000件を超えます。『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック』監著・編集。2026年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得しました。

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