「介護保険のサービスって、結局どれだけ種類があるの?」——要介護認定が出た直後のご家族から、いちばん多く受ける質問です。
介護保険のサービスは、大きく分ければたった3つのグループ。細かく数えて26種類ほどありますが、最初から全部を覚える必要はまったくありません。この記事では、全種類を費用の目安つきで一覧にしたうえで、「現場で最初に使うのは実質どれなのか」まで、担当してきたご家族の姿を思い浮かべながら整理します。
私はリハビリの専門職(理学療法士)として16年、そのうち訪問リハビリで多くのご家庭に入り、ケアマネジャーとしてもサービスを組む側にいました。パンフレットの説明ではなく、実際にどのサービスがどう使われているかという視点でお伝えします。
種類の多さに圧倒されなくて大丈夫。まず「家に来る・通う・泊まる・住む」の4つだけ押さえれば十分です。
介護保険サービスは大きく3つに分かれる【全体像】
まず地図を頭に入れましょう。介護保険のサービスは、制度上つぎの3グループに分類されます。
自宅で暮らしながら使う。訪問・通所・短期入所・福祉用具など、いちばん種類が多い
施設に入って生活する。特養・老健・介護医療院の3つ
住み慣れた地域の小規模な事業所を使う。市区町村が指定する
ただ、この「制度上の分類」はご家族にとっては少し分かりにくい。そこで本記事では、より直感的な「家に来てもらう/通う/泊まる/住む+道具」という切り口で、一つずつ見ていきます。
①訪問サービス|家に来てもらう(5種類)
専門職が自宅に来て、介護や医療、リハビリを行うサービスです。在宅介護の土台になります。
| サービス | 内容 | 費用の目安(1割) |
|---|---|---|
| 訪問介護(ヘルパー) | 入浴・排泄・食事の介助(身体介護)、掃除・買い物(生活援助) | 身体介護1回 約250〜400円 |
| 訪問看護 | 看護師が健康管理・医療処置。点滴や床ずれの手当てなど | 1回 約450〜900円 |
| 訪問リハビリ | 理学療法士などが自宅で機能訓練・生活動作の練習 | 1回20分 約300円前後 |
| 訪問入浴 | 専用浴槽を持ち込み、寝たきりでも入浴できる | 1回 約1,200円前後 |
| 居宅療養管理指導 | 医師・薬剤師・管理栄養士が訪問し、療養上の指導を行う | 1回 約300〜600円 |
費用は事業所の体制や加算、お住まいの地域で変わるため、あくまで目安です。「生活援助」は同居家族がいると使いにくい場合があり、ここは現場でよくつまずくポイントです。
「訪問看護」は医療のイメージが強くて敬遠されがちですが、体調が不安定な親御さんほど、早めに入れておくと安心材料になります。
②通所サービス|施設に通う(2種類)
| サービス | 内容 | 費用の目安(1割) |
|---|---|---|
| 通所介護(デイサービス) | 日帰りで通い、入浴・食事・レクリエーション。家族の休息にもなる | 1日 約700〜1,200円+食費 |
| 通所リハビリ(デイケア) | 医師の管理下でリハビリ中心。老健や病院が併設母体 | 1日 約800〜1,300円+食費 |
この2つは混同されがちですが、ざっくり「生活と交流ならデイサービス、機能回復ならデイケア」と覚えれば十分です。食費は別途1回500〜800円ほどかかります。
③短期入所サービス|施設に泊まる(2種類)
| サービス | 内容 | 費用の目安(1割・1泊) |
|---|---|---|
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 数日〜1週間ほど施設に泊まり、生活介護を受ける | 約2,500〜5,000円(食費・居住費込み) |
| 短期入所療養介護(医療型ショート) | 老健などで、医療・リハビリつきの短期入所 | 約3,000〜5,500円 |
ショートステイは、介護する家族が休むための「レスパイト」として非常に重要です。冠婚葬祭や家族の体調不良、そして「もう限界かも」という前に使ってほしいサービスです。
ショートは人気で予約が埋まりやすい。「いざという時のため」に、元気なうちから月1回でも使って施設に慣れておくのが、現場のコツです。
④施設サービス|施設に住む(3種類)
自宅での生活が難しくなったとき、生活の場を施設に移すサービスです。介護保険で入れる「施設サービス」は、厳密には次の3つを指します。
| 施設 | 特徴 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上。終の住まい。費用が安く人気で待機も多い | 約8〜15万円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すリハビリ施設。原則3〜6か月 | 約9〜16万円 |
| 介護医療院 | 長期の医療的ケアと生活の場を兼ねる | 約10〜20万円 |
よくある勘違い
「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、介護保険の“施設サービス”ではありません。これらは住まい+外部の居宅サービスという形で、費用も仕組みも別です。混同すると予算計画が狂うので注意してください。
⑤福祉用具・住宅改修|道具で暮らしを支える
人が来るサービスだけでなく、「道具」も介護保険の対象です。地味ですが、転倒予防や介護のラクさに直結する重要なサービスです。
- 福祉用具貸与(レンタル):介護ベッド・車いす・手すり・歩行器など13種目。月額数百円〜で借りられる
- 特定福祉用具販売:入浴・排泄に使うもの(シャワーチェア等)。年間10万円まで、原則1割負担で購入
- 住宅改修:手すり設置・段差解消など。上限20万円まで、1割負担で工事できる
住宅改修は「工事の前に申請」が鉄則
先に工事してしまうと保険給付を受けられません。必ずケアマネに相談し、事前申請を通してから着工してください。
地域密着型サービスとは|住み慣れた地域で使う
上記に加えて、市区町村が指定する「地域密着型サービス」があります。原則その市区町村の住民しか使えない、小規模できめ細かいサービスです。代表的なものは次の通りです。
- 小規模多機能型居宅介護:「通い」を中心に、「訪問」「泊まり」を一つの事業所で柔軟に組み合わせられる
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:1日複数回、短時間の訪問を組み合わせる。独居の重度者向け
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症の方が少人数で共同生活する
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機):小規模多機能に「訪問看護」を加えた形
種類は多いですが、「地域密着型は、使うときにケアマネが提案してくれるもの」くらいの理解で、今は十分です。
【現場のリアル】26種類あっても、最初に使うのは実質3つ
ここが、他のサイトにはあまり書かれていない、いちばん伝えたい話です。サービスは26種類あっても、在宅介護のスタート時に実際に使われるのは、ほとんどのケースで次の3つに集約されます。
週1〜2回から。入浴と食事、そして「家以外の居場所」ができることで、本人も家族も一気にラクになります。最初に導入されることが最も多いサービスです。
身体介護が必要ならヘルパー、体調管理が必要なら訪問看護。自宅での生活の“抜け”を埋めます。
介護ベッドや手すりを月数百円で。転倒を防ぎ、介護する側の腰も守ります。導入のハードルが最も低いサービスです。
逆に言えば、残りの20種類以上は「必要になったら足していくもの」。最初から全部を検討する必要はありません。まずこの3つで生活を回し、足りない部分をケアマネと相談しながら継ぎ足していく——これが現場の実際の進み方です。
「全部使わないと損」ではありません。使わないサービスがあって当然。生活が回っているなら、それがいちばん良いケアプランです。
要介護度別の支給限度額一覧|上限を超えると全額自己負担
居宅サービスは使い放題ではなく、要介護度ごとに「1か月あたりの上限(区分支給限度基準額)」が決まっています。この範囲内なら1〜3割負担、超えた分は全額自己負担です。
| 区分 | 1か月の上限額(目安) | 1割負担の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 約50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 約105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 約167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 約197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 約270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 約309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 約362,170円 | 約36,217円 |
金額は「1単位=10円」で計算した目安で、地域により多少変動します。負担割合が2割・3割の方や、限度額の考え方については、下記の記事で詳しく解説しています。
なお、施設サービスやショートステイの居住費・食費は、この限度額とは別枠の自己負担です。「上限内に収まっているのに請求が多い」と感じるのは、たいていこの別枠が理由です。
サービスを上手に組み合わせるコツ
介護保険は、単品で使うより「組み合わせ」で価値が出ます。現場でうまくいくご家庭には共通点があります。
- 「通い」で日中を埋める:デイを軸に、家族が働ける・休める時間を確保する
- 「泊まり」で家族が息をつく:ショートを定期的に組み込み、介護者が倒れない体制にする
- 「訪問」で穴を埋める:入浴や通院同行など、ピンポイントで足りない部分を補う
そして忘れてはいけないのが、介護保険では埋めきれない“すき間”があるという現実です。「病院内の付き添い」「散歩や趣味の外出」「同居家族の分の家事」などは、原則として介護保険の対象外。ここを無理に我慢すると、介護する側が先に潰れます。
そうした保険でカバーできない部分は、保険外の介護サービスで柔軟に補うという選択肢があります。「時間単位で、やってほしいことだけ頼める」タイプのサービスを知っておくと、いざという時に選択肢が広がります。
施設への住み替えを考え始めたら
在宅の限界が近づいたとき、次に検討するのが施設です。ただ、施設は種類も費用も幅が広く、パンフレットだけで比べるのは至難の業。「特養に申し込んだけれど待機が長い」「有料は費用が読めない」と悩むご家族を、現場で何度も見てきました。
候補を効率よく比べたいなら、条件を入れて一括で施設情報を取り寄せられるサービスを使うと、最初の絞り込みがぐっとラクになります。まずは相場観をつかむところから始めましょう。
よくある質問
- サービスは自分で選んで申し込むのですか?
- いいえ。担当ケアマネジャーが「ケアプラン」を作り、その中で必要なサービスを提案・調整してくれます。ご家族は希望を伝えれば大丈夫です。
- 要支援でも使えますか?
- 使えます。ただし要支援の方向けは「介護予防サービス」という名称になり、内容や上限額が要介護より抑えめです。窓口も地域包括支援センターになります。
- 26種類を全部使うと限度額はすぐ超えますか?
- 全部を同時に使うご家庭はまずありません。多くは3〜5種類の組み合わせで、限度額の6〜8割程度に収まります。使いすぎを心配する必要はほぼありません。
- サービスは途中で変えられますか?
- 変えられます。体調や生活の変化に合わせて、ケアマネに相談すればプランを見直せます。「合わない」と感じたら我慢せず伝えてください。
まとめ|介護保険は「組み合わせ」で価値が出る
介護保険サービスは大きく「家に来てもらう/通う/泊まる/住む+道具」。種類は26ほどありますが、最初に使うのは実質3つで十分です。
全部を覚えようとせず、まずデイ・訪問・福祉用具で生活を回し、足りない部分をケアマネと継ぎ足していく。これがいちばん失敗の少ない進め方です。保険で埋まらないすき間は、保険外や施設という選択肢で補えることも、頭の片隅に置いておいてください。
迷ったら、まず地域包括支援センターかケアマネに「うちは何から使えますか?」と聞けば大丈夫。ゼロから調べ尽くす必要はありません。
参考にした情報(公的機関)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。費用は自己負担割合・地域・加算により変動します。最新の適用は担当ケアマネジャーや市区町村の窓口でご確認ください。
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