「介護費が高い月があった。あれって、いくらか戻ってくるんじゃなかった?」——そう思って調べ始めた方に、先に結論をお伝えします。
高額介護サービス費は、1か月の介護保険サービスの自己負担が上限を超えたら、超えた分が戻ってくる制度です。医療の「高額療養費」の介護版だと思ってください。申請は初回の1回だけ。あとは自動で振り込まれます。
ただ、現場で家族から一番多い声は「思ったより戻らなかった」です。戻る対象にならないお金が、けっこうあるからです。この記事では、制度の中身と申請手順に加えて、私がケアマネとして担当したご家族が実際につまずいた点——「なぜ期待より少ないのか」「申請書が来ないケース」「負担限度額認定との違い」まで、順番に説明します。
リハウルフ制度の数字は厚生労働省の一次情報で確認したうえで、現場で実際に起きることを添えています。
- 高額介護サービス費の仕組みと、所得別の月額上限額(早見表)
- 申請の手順と、振り込まれるまでの期間・時効
- 「戻る対象にならないお金」——思ったより少ない本当の理由
- 施設に入っている親の「負担限度額認定」との違い
- ケアマネに聞いておくべきこと
高額介護サービス費とは?30秒でわかる仕組み
高額介護サービス費とは、1か月(1日〜末日)に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えたとき、その超えた分が後から払い戻される制度です。上限は世帯単位・月単位で決まっています。
医療の制度とは「別の財布」
医療費が高額になったときの「高額療養費制度」とは別枠です。介護は介護、医療は医療で、それぞれ上限を超えた分が戻ります。両方を1年分まとめて計算し直す「合算」の制度もあり、これは記事の後半で説明します。
所得別の月額上限額|まず自分の家がどこかを確認
上限額は所得に応じて6区分あります。金額は世帯単位(同じ世帯に介護保険を使う人が複数いれば、その自己負担を合算して判定)です。
| 区分(世帯の状況) | 月額上限 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上) | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万〜690万円未満(年収約770万〜1,160万円) | 93,000円(世帯) |
| 上記以外で住民税課税の世帯(=多くの一般世帯) | 44,400円(世帯) |
| 世帯全員が住民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| 住民税非課税で、前年の合計所得+年金収入が80万円以下/老齢福祉年金受給者 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 生活保護を受けている方など | 15,000円(個人) |
「年間の上限」もある(一般区分の緩和措置)
住民税は課税だが、同じ世帯の65歳以上が全員1割負担という世帯には、月44,400円とは別に年間446,400円(=37,200円×12か月)という年間上限の緩和措置があります。負担が急に増えないための経過的な措置です。当てはまりそうなら、自治体に「年間上限の対象か」を確認してください。
そもそも上限が変わる前提として「あなたの親が1割・2割・3割のどれで負担しているか」があります。判定の仕組みは介護保険の負担割合|1割・2割・3割はこう決まるで詳しく解説しています。
「思ったより戻らない」本当の理由|対象にならないお金
ここが、他サイトがあっさり流していて、現場で一番トラブルになるところです。高額介護サービス費で戻るのは、あくまで「介護保険サービスの自己負担(1〜3割)」だけ。同じ月に払った介護のお金でも、次のものは対象外です。
高額介護サービス費の対象にならないもの
- 福祉用具の購入費・住宅改修費(別に上限20万円などの補助があるが、この制度とは別枠)
- 施設やショートステイの食費・居住費(部屋代)・日常生活費
- 区分支給限度基準額を超えて、全額自己負担で使ったサービス分
- 紙おむつ代など、保険外で自費購入したもの
たとえば、ショートステイを長く使った月。請求書は10万円を超えていても、その大半が食費と部屋代だった、というのはよくあります。高額介護サービス費で見るのは「介護費の1〜3割部分」だけなので、戻る額は請求書の見た目よりずっと小さくなるのです。



施設に入っている親は要注意|「負担限度額認定」との違い
親が特養などの施設に入っている、あるいはショートステイをよく使う場合、混同しやすい別の制度があります。「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」です。名前は似ていますが、対象がまったく違います。
| 制度 | 何が安くなるか |
|---|---|
| 高額介護サービス費 | 介護費の自己負担(1〜3割)が上限を超えた分が戻る |
| 負担限度額認定(特定入所者介護サービス費) | 住民税非課税世帯などが対象。施設の食費・部屋代が軽減される(申請制) |
つまり、施設利用で重くなる食費・部屋代を軽くするのは「負担限度額認定」のほう。高額介護サービス費だけ申請して「食費が高いまま」になっているご家族を、現場でよく見ます。親が非課税世帯で施設・ショートを使うなら、負担限度額認定も申請できないか、必ずケアマネか自治体に確認してください。
申請の手順|初回の1回だけ、あとは自動
手続きは難しくありません。多くの自治体では、上限を超えた月の約3か月後に、市区町村から「お知らせ」と「支給申請書」が郵送で届きます。
- STEP1|自治体から申請書が届く上限超過が確認された月の約3か月後に、介護保険の担当課から通知と申請書が郵送されます。
- STEP2|申請書に振込口座などを記入氏名・住所・振込先口座を書きます。自治体によっては領収書の添付を求められることがあります。
- STEP3|市区町村の窓口へ提出郵送・窓口・オンラインなど、自治体の指定方法で提出します。
- STEP4|指定口座に振り込まれる審査後、登録した口座へ振り込まれます。2回目以降は申請不要で自動振込になる自治体がほとんどです。
申請できる期限は、サービスを利用した月の翌月1日から2年間です。2年を過ぎた分は戻りません。「申請書が来た記憶はあるが出していない」という方は、今すぐ自治体に確認してください。
申請書が「来ない」ケースがある
「該当したら自治体から通知が来る」——これは原則そうですが、来ないこともあるのが現場の実感です。よくあるのは次のパターンです。
- 引っ越しや施設入所で住所が変わり、通知が旧住所に届いた
- 複数の事業所を使っていて、自治体側のデータ突合が遅れている
- 親本人あての封書が、通帳や書類の山に埋もれて開封されていない
- そもそも該当した月があることに、家族が気づいていない
心当たりがあるなら、待つのではなく、こちらから自治体の介護保険担当課に問い合わせてください。「過去に高額介護サービス費に該当した月はありませんか」と聞けば調べてもらえます。2年の時効がある以上、待ちの姿勢は損につながります。
試算例|一般世帯はいくら戻る?
イメージがわくよう、住民税課税の一般世帯(上限44,400円)を例に、ざっくり計算してみます。
ポイントは、この「51,000円」に食費・部屋代・福祉用具購入費などを含めないこと。含めて計算すると「もっと戻るはず」と誤解します。あくまで保険サービスの1〜3割部分だけで判定します。
医療費との合算「高額医療・高額介護合算療養費」
親が入退院を繰り返しているなど、医療費も介護費も両方かさむ家庭には、もう一段の救済があります。「高額医療・高額介護合算療養費」です。
これは、毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間で、医療保険と介護保険の自己負担を合算し、世帯の年間上限を超えた分がさらに戻る制度です。高額療養費・高額介護サービス費で戻った分を差し引いたうえで、なお重い場合に効いてきます。医療と介護が同じ年に重なった家庭は、加入している健康保険(後期高齢者医療なら市区町村)に相談してください。
また、これらの払い戻しとは別に、確定申告の医療費控除・障害者控除で戻せるお金もあります。詳しくは親の介護と確定申告|医療費控除・障害者控除で取り戻せるお金を参照してください。
担当ケアマネに聞いておくべきこと
制度をひとりで完璧に管理するのは大変です。ケアマネは制度の交通整理役。遠慮せず、次のことを聞いてください。
- 「うちの世帯の月額上限はいくらですか?」
- 「高額介護サービス費に該当しそうな月はありますか?」
- 「(施設・ショート利用なら)負担限度額認定は申請できますか?」
- 「医療費も重い年です。合算療養費の対象になりそうですか?」



そもそも「ちゃんと制度を教えてくれるケアマネか」も大事です。合わないと感じたらケアマネの選び方も見てみてください。
よくある質問
- 申請しないと戻ってきませんか?
- 初回は申請が必要です。多くは自治体から申請書が届きますが、届かないこともあるため、心当たりがあれば自分から問い合わせてください。2回目以降は自動振込が一般的です。
- いつ振り込まれますか?
- 利用月から通知まで約3か月、そこから申請・審査を経るため、実際の入金までは半年前後かかることも珍しくありません。自治体により差があります。
- 福祉用具の購入費や住宅改修費も対象ですか?
- 対象外です。これらには別枠の補助(購入費・改修費の支給)があります。高額介護サービス費で戻るのは、あくまで介護サービスの自己負担分(1〜3割)だけです。
- 世帯を分ければ上限は下がりますか?
- 上限は世帯の課税状況で決まるため、世帯分離で区分が変わる可能性はあります。ただし国民健康保険料など他の制度に影響が出ることもあり、損得は一概に言えません。安易に動かさず、自治体や専門家に相談してください。
まとめ|「戻る対象」を正しく知ることが第一歩
この記事の要点
- 高額介護サービス費は、月の介護費自己負担が上限を超えた分が戻る制度。申請は初回だけ。
- 一般世帯の月額上限は44,400円。所得により15,000〜140,100円。
- 戻るのは保険サービスの自己負担のみ。食費・部屋代・福祉用具購入費・住宅改修費は対象外。
- 施設・ショート利用の非課税世帯は「負担限度額認定」も要チェック。
- 時効は2年。申請書が来なくても、心当たりがあれば自分から自治体へ。
「知らないと損」という言葉は制度の話でよく使われますが、高額介護サービス費に関しては「中身を知らないと、期待して損した気になる」のが正確なところです。何が戻り、何が戻らないか。ここを押さえておけば、月々の請求書に振り回されずに済みます。まずは自分の家の上限額を確かめ、ケアマネか自治体に一声かけるところから始めてください。
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参考にした情報(公的機関)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。上限額や申請方法は改定されることがあるため、実際の申請時は必ずお住まいの市区町村の最新情報をご確認ください。









