「親が認知症で銀行口座が凍結された」「親の家を売りたいけど、本人の意思確認ができない」──認知症が進んだ親の財産・契約問題は、家族にとって本当に大きな壁です。
私はケアマネとして、成年後見制度を 「もっと早く知っていれば…」 と後悔するご家族を何度も見てきました。判断力があるうちに準備すれば選択肢が広い けれど、進んでからだと家庭裁判所への申立てが必須になり、家族の自由度が大きく制限されます。
この記事では、成年後見制度の仕組み・種類・費用・手続き、そして比較される 家族信託との違い を、現役ケアマネが家族目線で完全解説します。
なぜ成年後見制度が必要なのか|30秒で
認知症が進むと「契約」が一切できなくなる
認知症が中等度以上に進むと、本人の判断力がないとみなされ、
- 銀行口座の解約・大きな引き出し
- 不動産の売却
- 介護施設への入居契約
- 保険の見直し
- 遺言書の作成
これらが 法的にできなくなります 。家族でも代理できない。
そこで「成年後見人」が必要
家庭裁判所に申し立てて、本人に代わって財産・契約を管理する人(後見人)を立てる。それが 成年後見制度 です。
成年後見制度の3つのタイプ
判断力の段階に応じて、3つに分かれます。
タイプ① 後見(最重度)
判断力をほぼ失った状態。後見人が 広範な代理権 を持って、本人の財産・契約を全面的に管理。
タイプ② 保佐
判断力が著しく不十分な状態。借金・不動産売却など重要な行為に 保佐人の同意 が必要。
タイプ③ 補助
判断力が不十分だが、ある程度自分で判断できる状態。特定の行為だけ 補助人の同意 が必要。
実務上は 後見が圧倒的に多い ので、この記事では主に「後見」について解説します。
法定後見と任意後見|2つの開始タイミング
成年後見には、開始タイミングで2種類あります。
法定後見|認知症が進んでから
すでに判断力が低下した後に、家庭裁判所に申し立てて開始。
特徴
- 後見人を裁判所が決める(家族の希望と異なる場合も)
- 弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることが多い
- 月2〜6万円の報酬が必要(一生続く)
- 家族の財産管理の自由度が大きく制限される
任意後見|判断力があるうちに準備
判断力があるうちに、本人が 将来の後見人を指名 する契約を公正証書で結ぶ。
特徴
- 後見人を本人が選べる(家族指定可)
- 報酬も契約で決められる
- 開始時に裁判所への申立てが必要だが、後見人は事前指定済み
- 元気なうちにこれをやっておくのが理想
法定後見の手続きと費用
法定後見の申し立て手順を見ていきましょう。
申し立て手順
- 申し立て準備:必要書類を集める(2〜4週間)
- 家庭裁判所に申し立て:本人の住所地の家裁
- 審理・調査:裁判所が本人や家族と面接(1〜2ヶ月)
- 後見人選任の審判:裁判所が後見人を決定
- 後見開始:登記される
申し立てから開始まで 2〜4ヶ月 かかります。
申し立てに必要な書類
- 申立書
- 本人の戸籍謄本・住民票
- 後見人候補者の住民票
- 本人の診断書(医師作成)
- 財産目録
- 収支予定表
書類だけで20種類以上必要なことも。司法書士・弁護士に依頼するのが現実的 。
費用の目安
申し立て時の費用
- 申立手数料:3,000〜10,000円
- 鑑定費用:5万〜10万円(必要な場合)
- 司法書士報酬:10万〜20万円
- 合計:15万〜30万円
後見開始後の費用(一生続く)
- 専門職後見人(弁護士・司法書士):月2〜6万円
- 親族後見人:原則無報酬
専門職後見人の場合、 本人が亡くなるまで毎月支払い続ける ことに。長期化すると数百万円になります。
成年後見制度の3大デメリット|知っておくべき注意点
メリットだけでなく、デメリットもしっかり理解を。
デメリット① 一度始まると途中でやめられない
本人の判断力が回復しない限り、後見は本人が亡くなるまで続きます。「やっぱり家族で管理したい」と思っても変更できない。
デメリット② 後見人を家族が選べない(法定後見)
裁判所が決めるので、見ず知らずの専門職が後見人になることが多い。家族の希望と合わない人が選ばれることも。
デメリット③ 財産管理が硬直化
「本人のため」が原則なので、家族のための支出(孫の入学祝い等)が認められない。家族信託に比べて柔軟性が低い。
家族信託との比較|どちらを選ぶべき?
最近、成年後見制度の代替として注目される 家族信託 との比較。
比較表
| 項目 | 成年後見制度(法定) | 家族信託 |
|---|---|---|
| 開始タイミング | 判断力低下後 | 判断力があるうち |
| 管理者の選定 | 裁判所 | 本人が指名 |
| 管理者の費用 | 月2〜6万円 | 無料〜契約による |
| 柔軟性 | 低い | 高い |
| 不動産活用 | 制限多い | 自由度高い |
| 相続対策 | 不可 | 可能 |
| 初期費用 | 15〜30万円 | 30〜100万円 |
| 裁判所の関与 | あり | なし |
家族信託のおすすめポイント
- 信頼できる家族(子等)に財産管理を委ねられる
- 不動産の売却・活用が柔軟
- 相続対策と一緒にできる
- 月々の報酬が発生しない
成年後見のおすすめポイント
- 本人の判断力が既に低下している場合、これしか選択肢がない
- 専門職が法的に管理してくれる安心感
- 詐欺・悪徳商法から守れる
結論:判断力があるうちなら「家族信託」が有力
専門家の多くは、「元気なうちに家族信託」、「進んでから法定後見」 を推奨。
元気なうちにやっておくべき5つの準備
「いずれ認知症になるかも」と感じたら、早めに以下を:
準備① 任意後見契約
公証役場で公正証書を作成。費用3〜5万円。判断力があるうちに、信頼できる家族を後見人候補に指定 。
準備② 家族信託契約
司法書士・弁護士に相談して契約書作成。費用30〜100万円だが、長期的にはコスパ◎。
準備③ 代理人カード
銀行で「代理人カード」を発行してもらう。本人の代わりに家族がATM等で出金できる。
準備④ 暗証番号・口座情報の整理
本人が忘れる前に、銀行口座・印鑑・通帳の場所、保険の証書を家族で共有。
準備⑤ エンディングノート
本人の意向(医療・葬儀・財産分配)を文書化。法的拘束力はないが、家族の判断材料に。
弁護士・司法書士への相談|無料相談の活用
成年後見・家族信託は専門知識が必要なので、 必ず専門家に相談 を。
おすすめの相談ルート
① 弁護士ドットコム
オンライン相談で、無料で複数の弁護士に質問可能。地域や得意分野で絞り込み。
② 司法書士会の無料相談
各都道府県の司法書士会で無料相談会を開催。お住まいの地域で検索を。
③ 法テラス
低所得者向け。要件を満たせば無料相談可能。
④ 自治体の無料相談
市区町村役場で月1〜2回、無料の法律相談を実施していることが多い。
相談時に聞くべき5つの質問
- 「うちは成年後見と家族信託のどちらが向いているか?」
- 「初期費用と継続費用を比較して教えてほしい」
- 「具体的な手続きの流れと期間は?」
- 「兄弟との合意形成はどうすればいい?」
- 「税金面での影響は?」
まとめ|「判断力があるうち」がすべて
成年後見制度は強力な制度ですが、 「使いたい時には間に合わない」 制度でもあります。
🍀 成年後見・家族信託の5原則 ① 判断力があるうちに準備するのが大原則 ② まずは任意後見契約 or 家族信託の検討 ③ 法定後見はデメリットも多い(途中でやめられない・専門職に毎月数万円) ④ 家族信託は柔軟性が高く、相続対策にもなる ⑤ 必ず弁護士・司法書士に無料相談
「親はまだ元気だから」と先延ばしされがちですが、認知症は静かに進みます。 エンディングノート+任意後見の検討 だけでも、今日から始められます。
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