親が脳梗塞で倒れたら|回復期リハビリ「150日」の使い方

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「脳梗塞です」と告げられて、頭が真っ白になっていませんか。
麻痺が残るのか、歩けるのか、家に帰れるのか。何も分からないまま、時間だけが過ぎていく。

結論から言います。この病気は、家族が「いつ」「何を」するかで結果が変わります。そして、その分かれ道のほとんどは入院中にやってきます。

リハウルフ
理学療法士のリハウルフです。訪問リハビリ12年、脳梗塞後の方のご自宅に何百回とお邪魔してきました。その経験から、正直に言いにくいことも含めて書きます。
この記事で一番伝えたいこと
  1. 回復期リハビリ病棟には「日数の上限」がある 脳血管疾患は最長150日(重症例で180日)。ここを知らずに過ごすと、後で必ず後悔します。
  2. その病棟に移れるかは、入院から2ヶ月以内に決まる 家族が動かないと、選択肢が消えます。
  3. 回復の見通しは、発症2週間でだいたい見えている 絶望する必要も、過度に期待する必要もありません。現実を知ると、動けるようになります。

すでに退院が近い方、退院後の方は、「退院後の3ヶ月」の見出しから読んでください。

目次

まず、担当医に聞くべき3つの質問

「先生、どうなんでしょうか」と聞いても、返ってくるのは「様子を見ましょう」です。医師が悪いのではありません。質問が漠然としていると、答えも漠然とします。

次の3つを、メモを持って聞いてください。答えによって、家族がやるべきことが変わります。

① 病型は何ですかラクナ梗塞/アテローム血栓性/心原性脳塞栓症のどれか。
ここで再発リスクも、飲む薬も、回復の見通しも変わります。
心原性は一般に梗塞が大きくなりやすく、再発率も高い傾向があります。
② 回復期リハビリ病棟の対象になりますかこの記事で最も重要な質問です。
対象なら、次に「どこの病院に、いつ移れますか」まで聞く。
対象外と言われたら、その理由を必ず聞いてください。
③ 嚥下(えんげ)はどうですか飲み込みの状態。ここが悪いと誤嚥性肺炎で回復が止まります。
「口から食べられそうか」は、自宅復帰を左右する分かれ道です。
リハウルフ
②を聞かない家族が、本当に多いんです。聞かないまま急性期病院を退院してしまい、リハビリの機会を失った方を何人も見てきました。

脳梗塞リハビリの「時間割」を理解する

脳梗塞のリハビリには、制度で決められた時間割があります。これを知らないと、家族はただ流されます。

フェーズだいたいの期間この時期の主役
急性期発症〜2週間前後命を守る治療。
並行して早期離床(できるだけ早く起こす)。
回復期2週間〜6ヶ月ごろ回復期リハビリ病棟での集中リハビリ。ここが最大の勝負どころ。
維持期(生活期)おおむね6ヶ月〜訪問・通所リハビリ。
生活そのものがリハビリになる。

期間はあくまで目安です。重症度で前後します。ただ、「回復期に集中的にやる」という設計思想は共通です。

回復期リハビリ病棟|150日という時間制限

回復期リハビリテーション病棟は、1日最大3時間のリハビリを、毎日受けられる病棟です。急性期病院のリハビリ(1日20〜40分程度のことも多い)とは、密度がまったく違います。

ただし、入院できる日数に上限があります。

脳血管疾患の入院上限(診療報酬 A308)
  • 原則:150日
  • 高次脳機能障害を伴う重症の脳血管障害:180日
  • 入り口の条件:発症または手術から2ヶ月以内に、この病棟でのリハビリを開始していること

つまり、急性期病院でぼんやり2ヶ月過ごすと、この選択肢そのものが消えます。

家族がやることは、シンプルです。入院して1週間以内に、MSW(医療ソーシャルワーカー)に会いに行く。そして「回復期リハビリ病棟に移りたい」と口に出す。

MSWは病院の相談窓口にいます。「誰に相談すればいいか分からない」なら、看護師に「ソーシャルワーカーさんと話したいです」と言えば繋がります。

リハウルフ
回復期の病院は、地域によって空きの状況が全然違います。人気の病院は待ちが出ます。「空いてから考える」では間に合わないので、早めに動いてください。

「もう年だから」は、なぜ危険なのか

80代でも歩行が回復する方はいます。一方で、60代でも回復が限られる方もいます。年齢は、決定的な要因ではありません。

ただ、ここは正直に書きます。「諦めなければ必ず治る」わけでもありません。脳梗塞の回復は、損傷した場所と大きさに大きく左右されます。気持ちで乗り越えられる部分と、そうでない部分があります。

では、なぜ「年だから」が危険なのか。それが、リハビリをやらない理由になってしまうからです。家族が諦めると、リハビリの量が減ります。量が減れば、回復するはずだった分まで回復しません。ここは、確実に家族がコントロールできる部分です。

目指すべきは「元通り」ではなく、「残った機能で、どう暮らすか」です。麻痺が残っても、家に帰れる人はたくさんいます。

入院中にやる4つのこと(時系列)

〜1週間MSWに会う。「回復期リハビリ病棟を希望します」と伝える。
担当医に、前述の3つの質問をする。
〜2週間要介護認定を申請する。入院中でも申請できます。
市区町村の窓口か、地域包括支援センターへ。結果が出るまで1ヶ月前後かかるので、早いほど良い。
退院1ヶ月前ケアマネジャーを決める。MSWに紹介してもらうのが早い。
この時点で、住宅改修や福祉用具の話を始める。
退院時退院時カンファレンスに必ず出る。仕事を休んででも。
医師・看護師・リハビリ職・ケアマネが揃う、唯一の機会です。

要介護認定は、申請から結果まで1ヶ月以上かかります。「退院してから」では、確実に間に合いません。

退院時カンファレンスで、これだけは聞く

専門職が並ぶ場で、家族は緊張して何も聞けずに終わりがちです。紙に書いて持っていってください。

カンファレンスの持ち込みメモ
  • トイレは、どこまで一人でできますか(自宅復帰の最大の分かれ目)
  • お風呂は? 見守りだけでいいのか、介助が要るのか
  • 転ぶリスクはどのくらいですか/どんな場面が危ないですか
  • 食事の形態は? きざみ・とろみは必要か
  • やってはいけないことはありますか(血圧・運動の制限など)
  • 次に悪くなるとしたら、どんなサインですか
リハウルフ
「トイレ」を最初に聞いてください。夜間のトイレが一人で無理だと、家族の睡眠が削られて、半年で家庭が壊れます。ここは遠慮なく詰めて聞くところです。

退院後の3ヶ月|家族が倒れない設計をする

在宅介護でいちばん多い失敗は、家族が頑張りすぎて、3ヶ月で燃え尽きることです。本人の機能より、まず介護者の休みを設計してください。

時期やること見るポイント
1ヶ月目サービスを開始し、生活のリズムを作る転倒がないか。
介護者が眠れているか。
2ヶ月目ケアマネに遠慮なく不満を言う回数・時間帯が生活に合っているか。
合わなければ変えられます。
3ヶ月目ショートステイを試す
ケアプランを見直す
介護者の休息日が、月に何日ありますか。
ゼロなら設計ミスです。

使えるサービスの組み合わせは、だいたいこうなります。

訪問リハビリ週1〜2回。PT・OT・STが自宅に来る。生活の場でのリハビリは、病院と別物の効き方をします。
通所リハビリ(デイケア)週2〜3回。リハビリ+入浴+家族の自由時間
訪問看護服薬管理・血圧管理。再発予防の実務は、ここが担います。
福祉用具レンタルベッド・手すり・歩行器。介護保険で1〜3割負担で借りられます。
ショートステイ家族が休むための制度です。使うことに罪悪感を持たないでください。

それでも、介護保険だけでは埋まらない時間が出ます。「通院に付き添えない」「夜だけ誰かにいてほしい」「リハビリの回数を増やしたい」——このあたりは、介護保険の枠外です。保険外サービスは自費ですが、家族が仕事を辞めるより、はるかに安く済むことがあります。

見落とされやすい2つの後遺症

血管性認知症

脳梗塞のあとは、血管性認知症のリスクが上がります。特徴は、アルツハイマー型と違って「まだら」に出ること。しっかりしている時と、そうでない時の差が大きい。

家族が「サボっている」「わざとやっている」と誤解しやすいのが、この病気の残酷なところです。同じ話の繰り返し、意欲の低下、感情のコントロールが効かない(急に泣く・怒る)が出たら、医師に相談してください。

高次脳機能障害

体は動くのに、生活が回らない。これが高次脳機能障害です。左側にあるものにぶつかる(半側空間無視)、段取りが組めない、すぐ疲れる、怒りっぽくなった。

見た目に分からないので、いちばん理解されません。「性格が変わった」と感じたら、性格ではなく症状の可能性があります。リハビリ職に相談してください。

再発予防|ここが本当の勝負

再発すると、回復はもっと難しくなります

脳梗塞の再発率は、1年で約10%、10年で約半数と報告されています(久山町研究などの疫学データ)。病型によって差が大きく、心原性脳塞栓症は特に高いとされます。

2回目は、1回目より重くなることが多い。今やっているリハビリを守るためにも、再発予防が最優先です。

最重要薬を絶対に切らさない。抗血栓薬の自己判断での中断は、再発に直結します。
「調子がいいから」でやめる方が本当にいます。訪問看護に管理してもらうのが確実です。
次に重要血圧・血糖・LDLコレステロールの管理。数値を家で記録する。
生活禁煙(最優先)/節酒/減塩
歩ける方はウォーキング。歩けない方も、座位・立位の時間を作る。
受診定期受診を飛ばさない。付き添えないなら、介護タクシーや保険外サービスを使ってでも続ける。

お金の話|実際いくらかかるのか

公的な調査データで見ると、こうなります。

項目平均
住宅改修・福祉用具などの一時費用47.2万円
在宅介護の月額5.3万円
施設介護の月額13.8万円
介護期間55.0ヶ月(4年7ヶ月)

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
※これは介護全般の平均です。脳梗塞に限った数字ではなく、施設は種類によって大きく上下します(有料老人ホームはこれより高くなることが多い)。

注目してほしいのは「4年7ヶ月」のほうです。月額が想定内でも、期間が読めていないと破綻します。短距離走の予算で、マラソンを走らないでください。

負担が重いときは、高額介護サービス費で月の自己負担に上限がかかります(一般的な所得区分で世帯44,400円など、所得により変動)。申請しないと戻りません。申請しないと戻りません。

家族が壊れないために

脳梗塞は、ある日突然来ます。心の準備がないまま、介護者になる。これは、事故に遭ったのと同じです。家族が動揺するのは、当たり前です。

それでも家族は「しっかりしなきゃ」と思ってしまう。そして、誰にも弱音を吐けないまま、静かに追い詰められていきます。

地域包括支援センターの介護者カフェ、家族会を使ってください。同じ立場の人と話すだけで、抱えているものの重さは変わります。

リハウルフ
ご家族に会うたび思うんですが、みなさん頑張りすぎです。休むことは、サボりじゃありません。介護を続けるための、技術です。

まとめ

📌 親が脳梗塞で倒れたとき、家族がやること
  1. 入院1週間以内にMSWへ「回復期リハビリ病棟を希望します」 発症から2ヶ月を過ぎると、この選択肢は消えます。
  2. 担当医に「病型」「回復期の対象か」「嚥下」を聞く 漠然と聞けば、漠然としか返ってきません。
  3. 要介護認定は入院中に申請する 結果まで1ヶ月前後かかります。
  4. 退院時カンファレンスで「トイレ」を聞く 自宅復帰できるかは、ほぼここで決まります。
  5. 薬を切らさない。再発は1年で約10% 2回目は重くなります。
  6. 介護者の休息日を、最初から予定に入れる 平均4年7ヶ月。マラソンです。

今日、全部やる必要はありません。まず、MSWに会う。それだけで十分です。

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参考にした情報(公的機関)

個別の医療判断は必ず主治医に、介護サービスの利用はケアマネジャー・地域包括支援センターにご相談ください。
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。

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この記事を書いた人

リハウルフのアバター リハウルフ 理学療法士/ケアマネ

理学療法士(2010年取得・16年目)。通所リハビリ、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護医療院、回復期リハビリ病棟で勤務。うち12年が在宅の現場で、訪問したお宅は1,000件を超えます。『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック』監著・編集。2026年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得しました。

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