介護ベッドは、レンタルと購入どっちがいいのか——。調べると「お得なのはこっち」という費用比較ばかり出てきます。でも、その多くはレンタル業者が書いた記事です。
理学療法士・介護支援専門員として在宅の高齢者を担当してきた立場から、先に結論をお伝えします。要介護2以上なら、レンタル一択です。ただしその理由は「安いから」ではありません。介護ベッドの本当の価値は、親の状態が変わったときに、何度でも見直せることにあります。
この記事では、費用比較だけでなく、業者が書かない「そもそもベッドは必要か」「買って後悔する理由」「軽度でも借りられる道」まで、現場目線でお伝えします。
この記事でわかること
- 介護ベッドは「買うと介護保険が使えない」という前提
- レンタルの本当の価値は“何度でも見直せる”こと
- 要介護1以下でも借りられる「例外給付」の道
- PT視点|そもそもベッドは必要か・過剰は自立を奪う
- ベッドより床ずれを分ける「マットレス」の話
結論|要介護2以上はレンタル一択。理由は「お得」じゃない
まず、大前提を押さえてください。介護ベッド(制度上は「特殊寝台」)は、介護保険が使えるのはレンタルのときだけです。購入には保険が使えません。全額自腹です。
なぜ「買う」より「借りる」なのか
高齢者の体の状態は、これから変わります。今は背上げだけでよくても、半年後には床ずれ予防のマットレスが要るかもしれない。買ってしまうと、その変化に追従できません。レンタルなら、ケアマネを通じて状態に合わせて何度でも交換・見直しができる——ここが本質です。
リハウルフまず制度|介護ベッドの3つの選択肢
選び方は、親の要介護度で決まります。
| 選択肢 | 向いている人 | 費用の目安(月) |
|---|---|---|
| ①介護保険でレンタル | 要介護2以上(原則) | 1割負担で1,000〜2,000円前後 |
| ②全額自費でレンタル | 認定がない・要介護1以下で例外にも当たらない | 数千〜1万円台 |
| ③購入(保険対象外) | 長期・状態が安定・自費でよい | 数万〜数十万円(一括) |
数字だけ見ても分かるとおり、要介護2以上なら、保険レンタルが圧倒的に安い。しかも壊れれば無料で修理・交換され、不要になれば返すだけ。購入だと故障は自腹、不要になれば粗大ごみです。
【本題】レンタルの本当の価値は「何度でも見直せる」こと
ここが、業者の費用比較記事が書かないところです。レンタルの最大の利点は安さではなく、状態の変化に、ずっと付き合ってくれることです。
- 機能が足りなくなったら|2モーターから3モーターへ、無料で入れ替えられる
- 床ずれが心配になったら|マットレスを体圧分散タイプへ変更できる
- 退院・退所で不要になったら|返却するだけ。処分費も置き場所の悩みもない
- 合わなかったら|別の機種に替えてもらえる



要介護1以下でも借りられる道がある|例外給付
「うちの親は要介護1だから、保険レンタルは無理」——そう諦める前に知ってほしいことがあります。
制度上、介護ベッドの保険レンタルは原則として要介護2以上です。要支援1〜要介護1の軽度の方は、原則対象外。ただし「起き上がりや寝返りが自力では難しい」など、厚労省の定める状態に当てはまる場合は、例外給付として保険レンタルが認められることがあります。
まずケアマネに相談を
例外給付には、医師の意見や市区町村の確認といった手続きが必要です。判断はケアマネと福祉用具の専門相談員が組み立ててくれます。「軽度だから」と自己判断で全額自費に進む前に、一度相談する価値は十分あります。
PT視点|そもそもベッドは必要か。過剰は自立を奪う
これも、レンタル業者からはまず出てこない話です。介護ベッドは、入れれば入れるほど良いものではありません。
私が現場で見てきたのは、まだ自分で立てる人に、囲いすぎ・高すぎのベッドを入れて、かえって動けなくしてしまうケースです。サイドレール(柵)で囲みすぎれば、それは身体拘束に近くなります。背上げに頼りすぎれば、自分で起き上がる力が落ちます。
道具は「できることを奪わない」範囲で
立てる人には、立ち上がりを助ける高さと、つかまれる手すり(介助バー)があれば十分なことも多い。「寝たきりに備えてフル装備」ではなく、今の力を残す装備を。ここはケアマネや理学療法士の視点が効くところです。
マットレスが本命|ベッドより床ずれを分ける
意外に思われますが、寝たきりに近い方にとっては、ベッド本体よりマットレス選びのほうが重要です。長時間同じ姿勢で寝ていると、お尻やかかとに床ずれ(褥瘡・じょくそう)ができます。これがいったんできると、治すのは本当に大変です。
自分で寝返りが打てなくなってきたら、体の圧を分散させる体圧分散マットレス(エアマットなど)を検討します。これも福祉用具貸与の対象で、ベッドとセットでレンタルできます。マットレスは体格・動ける度合いで最適が変わるので、「合わなければ替える」レンタルの柔軟さがここでも効きます。
ただし注意点があります。柔らかすぎるエアマットは、床ずれ予防には良くても、まだ自分で寝返りや起き上がりができる人には“動きにくい”ことがあります。沈み込んで力が入らず、かえって体を起こせなくなる。ここでも「寝たきり前提のフル装備」ではなく、今の動きを邪魔しない硬さを選ぶのが現場の考え方です。ベッドもマットレスも、道具は親の状態に「ちょうど合う一点」を探すもの。多機能・高性能が正解とは限りません。
それでも購入を選ぶなら|中古・ネットの落とし穴
認定がなく状態も安定していて、自費で買いたい——という選択もあります。その場合の注意点です。
- メンテナンス・故障は自己責任|モーターが壊れれば実費修理。レンタルなら無料。
- 中古はリコール・劣化に注意|過去に柵に挟まれる事故もあった。安全基準を満たすか確認を。
- 重くて動かせない・処分に困る|介護ベッドは重量物。不要時の処分費もかかる。
- 状態が変わっても買い替えにくい|結局“もったいなくて”合わないまま使い続けがち。
現場で見た「買って後悔」
後悔①|退院後すぐ状態が変わり、買ったベッドが合わなくなった
「長く使うから」と購入したが、数か月で床ずれ予防マットが必要に。買い替えられず、合わないまま使い続けることに。
後悔②|介護が終わり、大きなベッドの処分に困った
重くて運び出せず、処分費もかさんだ。レンタルなら「返すだけ」で済んだ場面。
共通するのは、「状態が変わる」ことを見込んでいなかった点です。介護は、始まりも終わりも予測しづらい。だからこそ、身軽でいられるレンタルが向いています。
進め方|まずケアマネに相談する
STEP1|ケアマネに「ベッドを検討したい」と伝える
要介護度で保険レンタルが使えるか、例外給付に当たるかを判断してくれる。認定がまだなら、まず要介護認定の申請から。
STEP2|福祉用具の専門相談員が家に来て提案
部屋の広さ、親の動き、介護する人の状況を見て機種を選ぶ。ここで「今の力を残す装備」に絞ってもらう。
STEP3|使いながら見直す
状態が変われば機能・マットレスを入れ替える。合わなければ替える。これがレンタルの真価。



よくある質問
- レンタルは他人が使ったベッドで、衛生面が心配です
- 返却されたベッドは、事業者が国のガイドラインに沿って洗浄・消毒・点検してから貸し出します。マットレスのカバー交換や部品の消毒も行われます。中古を個人で買うより、むしろ管理は行き届いています。
- モーターは2つと3つ、どちらを選べばいい?
- 背上げと高さ調整ができる2モーターで足りる方が多いです。膝上げ(足上げ)も必要なら3モーター。ただし機能が多いほど良いわけではありません。親の動きに合わせて、専門相談員と決めてください。レンタルなら後から替えられます。
- 認定を受けていません。今すぐベッドが要る場合は?
- 認定が下りるまでの間は全額自費レンタルでしのぐ方法があります。まず要介護認定を申請し、並行してケアマネや地域包括支援センターに相談を。認定後にさかのぼって使える仕組みもあるため、早めの相談が得です。
- レンタル料の自己負担はいくら?
- 介護保険の負担割合(1〜3割)によります。1割の方なら、ベッド本体で月1,000〜2,000円前後が目安。マットレスやサイドレールを付けると加算されます。正確な額はケアマネに見積もりを出してもらえます。
まとめ|介護ベッドは「買う」より「合わせ続ける」
この記事の要点
- 介護ベッドは買うと介護保険が使えない。要介護2以上はレンタル一択
- レンタルの本当の価値は安さより「何度でも見直せる」こと
- 要介護1以下でも例外給付で借りられる道がある。まずケアマネに相談
- 過剰なベッドは自立を奪う。今の力を残す装備を選ぶ
- 寝たきりに近いならマットレスが床ずれを分ける
介護ベッドは、一度決めて終わりの買い物ではありません。親の状態に合わせて、育てるように見直していく道具です。だからこそ「買う」より「借りて合わせ続ける」。まずはケアマネへの一言から始めてください。
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参考にした情報(公的機関)
- 厚生労働省|福祉用具貸与(特殊寝台の対象・軽度者に対する例外給付)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。対象条件・費用は制度改定や自治体・事業者により異なります。詳細は担当のケアマネジャーや市区町村の窓口でご確認ください。









