介護ベッドも、車いすも、手すりも——「買う」前に、まず「借りる」を考えてください。
介護保険を使えば、月額数百円〜で借りられます。しかも、体の状態が変われば、無料で別の物に交換できる。これが在宅介護のコストと手間を大きく左右します。
リハウルフ先に結論です。在宅介護の福祉用具は、原則「レンタル(貸与)」から検討する。理由は、高齢者の体は変化するから。買ってしまうと合わなくなっても使い続けることになりますが、レンタルなら状態に合わせて交換できます。この記事では、対象品目・費用・手続きに加え、他ではあまり書かれない「借りた“後”に現場で起きること」までお伝えします。
- 介護保険でレンタルできる13種目と、要介護度で借りられないもの
- 2024年から始まった「貸与・販売の選択制」(知らないと損)
- 費用の目安と、利用開始までの5ステップ
- 失敗しない業者・相談員の選び方
- 借りた後、放置してはいけない理由——体が変われば用具も合わなくなる
福祉用具レンタルとは|30秒で
福祉用具レンタルとは、介護保険を使って、介護に必要な用具を月額の自己負担1〜3割で借りられる制度(正式名称は「福祉用具貸与」)です。要介護認定を受けている人が対象で、ケアマネジャーを通して利用します。
なぜ「買う前にレンタル」なのか
・安い:数万円〜十数万円する用具が、月数百〜数千円で使える
・交換できる:体の状態が変われば、別の用具に無料で替えられる
・手間がない:点検・修理・処分は業者がやってくれる
・「合わなかったら替えればいい」——この身軽さが、いちばんの価値です。
レンタルできる13種目|要介護度で借りられないものがある
介護保険でレンタルできるのは、次の13種目です。ただし、要介護度が軽い(要支援1〜要介護1)と、原則として借りられない品目があります。
| 要支援1〜要介護5 (誰でも対象) | 手すり(工事不要の置き型・突っ張り型)/スロープ/歩行器/歩行補助つえ/自動排泄処理装置の交換部品 |
|---|---|
| 原則、要介護2以上 | 車いす/車いす付属品/特殊寝台(介護ベッド)/特殊寝台付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト(つり具を除く) |
「原則、要介護2以上」とあるものは、要介護1以下でも、状態によっては例外的に借りられる場合があります(医師の意見などをもとにした「例外給付」)。「うちは要介護1だからベッドは無理」と諦めず、まずケアマネに相談してください。



【2024年から】一部は「借りる・買う」を選べる|選択制
ここは、古い記事には載っていない新しい制度です。2024年(令和6年)4月から、一部の福祉用具は「レンタル」か「購入」かを利用者が選べるようになりました(貸与・販売の選択制)。
- 固定用スロープ(持ち運びできるタイプ)
- 歩行器(歩行車は除く)
- 単点杖(松葉づえは除く)
- 多点杖(脚が複数あるタイプの杖)
これらは比較的安価で、長く同じ物を使い続けやすいため、「レンタルし続けるより買った方が安いこともある」という考え方から選択制になりました。
選ぶときの注意
買えば手元に残りますが、体の状態が変わって合わなくなっても、交換はききません。逆にレンタルなら、点検やメンテ、状態変化への対応がついてきます。
「長く同じ物で大丈夫そう」なら購入、「状態が変わりそう・お試ししたい」ならレンタル。相談員と身体状況をふまえて決めてください。
費用の目安|月額と「買う枠」
レンタル料は用具ごとに設定され、その1〜3割(所得による)が自己負担です。おおよその月額自己負担(1割の場合)の目安は次のとおり。※地域・商品で変動します。
| 介護ベッド | 月 約700〜1,500円(付属品のマットレス・柵を含めると増える) |
|---|---|
| 車いす | 月 約300〜700円 |
| 歩行器 | 月 約200〜400円 |
| 手すり(置き型) | 月 約300〜600円 |
一方、肌に触れる・再利用しにくい用具(ポータブルトイレ、入浴用いす、シャワーチェアなど)はレンタルできず「購入」になります(特定福祉用具販売)。この購入費も介護保険の対象で、年間10万円(毎年4月〜翌3月)まで、1〜3割負担で買えます。いったん全額払い、後で払い戻す自治体もあれば、最初から自己負担分だけで済む方法もあります。ケアマネに確認してください。
利用開始までの5ステップ
- 要介護認定を受けるまだなら、地域包括支援センターや市区町村の窓口で申請します。
- ケアマネジャーに相談する「立ち上がりがつらい」「夜のトイレが不安」など、困りごとを具体的に伝えます。
- 福祉用具専門相談員が自宅に来る実際の住まいと体の状態を見て、機能・価格の違う複数の候補を提示してくれます。
- 試して選ぶ可能なら実物を試用。使い勝手を確かめてから決めます。
- 納品・使い方の説明自宅に届き、使い方や注意点の説明を受けて利用開始です。
すべての起点はケアマネジャーです。まだ担当がいない場合は、地域包括支援センター(高齢者の相談窓口)に「福祉用具を借りたい」と伝えれば、そこから話が動き出します。
失敗しない業者・相談員の選び方
福祉用具は「借りて終わり」ではなく、相談員との付き合いが続きます。だから、業者・担当者選びが地味に効いてきます。
- 2社以上の候補を比べる
同じ用具でも料金や提案が違う。ケアマネに「他の選択肢も見たい」と言っていい - 「福祉用具専門相談員」がきちんと訪問して選定してくれるか
カタログを渡すだけでなく、家と体を見て提案してくれる担当は信頼できる - 納品後のフォロー(点検・交換・故障対応)の体制
「何かあったら連絡ください」で終わらず、定期的に様子を見に来てくれるか
【本題】借りた“後”に、現場で起きること
ここが、いちばんお伝えしたい部分です。多くのご家族は「用具は一度借りたら、あとはそのまま」だと思っています。でも、現場で問題が起きるのは、まさにこの「借りた後の放置」からです。
私が現場で見てきた「合わなくなった用具」
・歩けるようになったのに、まだ車いす——安全のつもりが、かえって足が弱る
・体が弱ったのに、昔のままの手すり位置——立ち上がれず、転倒しかける
・ベッドの高さや柵が合っておらず、隙間に体が挟まる危険
・付属のマットレスが体に合わず、床ずれの原因になっている
用具が悪いのではありません。「体は変わるのに、用具が変わっていない」ことが問題なのです。
ここでレンタルの本領が発揮されます。合わなくなったら、追加費用なしで別の物に交換できる。これは購入では絶対にできないことです。だからこそ、「今の用具、本当に体に合っていますか?」と定期的に見直してほしい。
見直しは、あなたから言っていい
レンタルの場合、相談員は利用開始から一定期間内に少なくとも一度、使い方の確認(モニタリング)を行うことになっています。でも、それを待つ必要はありません。「最近、立ち上がりにくそう」「前より歩けるようになった」——そう感じたら、その都度ケアマネや相談員に伝えてください。用具の見直しは、家族からの一言がきっかけになります。



レンタル vs 購入|どう判断する
| レンタル向き | 状態が変わりそう/お試ししたい/高価な物(ベッド・車いす・リフト)/期間限定の利用 |
|---|---|
| 購入向き | 肌に触れる物(トイレ・入浴用)で購入必須のもの/長く同じ物を使えて安価な物(杖など) |
迷ったら、まずレンタルで試し、「これで固定でいい」と分かってから購入を検討するのが失敗しない順番です。特に介護ベッドのような高価な用具は、購入すると数万円〜十数万円。合わなかったときのダメージが大きすぎます。
福祉用具と住宅改修の「合わせ技」
手すりには2種類あります。工事のいらない置き型・突っ張り型は「レンタル」、壁に固定する工事型は「住宅改修」という別制度です。住宅改修は、生涯で20万円までを対象に、1〜3割負担で工事できます(手すり設置・段差解消など)。
「まずレンタルの手すりで位置と必要性を確かめ、固定でいいと分かってから工事する」——この順番なら、住宅改修の20万円枠を無駄なく使えます。いきなり工事しないこと。これも現場でよく伝えるコツです。
よくある質問
- レンタル品はお下がりですよね?衛生面が心配です
- 返却された用具は、専門の工場で洗浄・消毒・点検されてから再貸与されます。基準に沿った処理が義務づけられているので、中古とはいえ、衛生管理された状態で届きます。気になる点は、遠慮なく相談員に確認してください。
- 月の途中で借り始めたら、料金はどうなりますか?
- 月額での契約が基本ですが、利用が半月に満たない場合などは、料金が調整(日割り・半額など)される取り扱いがあります。契約前に、料金の計算方法を業者に必ず確認しておくと安心です。
- 要介護認定を受けていなくても借りられますか?
- 介護保険を使ったレンタルには、要介護(要支援)認定が必要です。認定がない場合は、全額自己負担の民間レンタルという手もありますが、まずは要介護認定の申請を。認定されれば費用が大きく変わります。
- 今借りている用具が合っていない気がします。替えられますか?
- 替えられます。それがレンタルの最大の利点です。ケアマネか福祉用具の相談員に「合っていないかもしれない」と伝えてください。我慢して使い続けるのは、事故のもとです。
まとめ|「買う前にレンタル」「借りた後に見直し」
- 福祉用具は原則レンタル(貸与)から。安く、交換でき、手間がない
- 13種目が対象。軽度でも例外給付で借りられる場合がある
- 2024年から、杖・歩行器などはレンタルか購入を選べる(選択制)
- 費用は月額の1〜3割負担。肌に触れる物は購入(年10万円枠)
- 借りた後の放置が危険。体が変わったら、必ず用具を見直す
- 手すり工事などは住宅改修(生涯20万円枠)と使い分ける
福祉用具は、「体の変化に合わせて、伴走してくれる道具」です。買って終わりにせず、レンタルの身軽さを活かして、そのときの体にいちばん合う物を使い続けてください。困ったら、ケアマネと福祉用具の相談員に。一人で抱え込まないことが、安全な在宅介護の第一歩です。



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参考にした情報(公的機関)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。費用は目安であり、地域・商品・所得による自己負担割合で変わります。個別の対象可否や金額は、ケアマネジャー・福祉用具事業所・お住まいの市区町村にご確認ください。









