「デイサービス? 行かん。あんな年寄りの集まりに」——お父さんに、そう言われていませんか。
男性がデイを嫌がるのには、女性とは違う“男性ならでは”の理由があります。そこを外すと、何を言っても動きません。
リハウルフ先に、この記事の結論を言います。
- 男性が嫌がる根っこは「役割の喪失」。ここを理解しないと始まらない
- やってはいけないのは無理強い。一度失敗すると、二度と行かない
- 勝負は「最初の3回」。ここを乗り切れば、続くようになる
- どうしても合わないなら、デイに固執しないという選択肢
なぜ「男性」は、特に嫌がるのか
「新しい場所が不安」「面倒くさい」——これは男女共通の理由です。でも、男性が女性以上に頑なになるのには、もっと深い理由があります。
- 「世話される側」になるのが耐えられない
長年、家族を養い、仕事で指示する側だった人ほど強い - 役割がない場所に、居場所を感じられない
「何をしていいか分からない」=男性にとって最大の苦痛 - おしゃべりや歌、レクが「子どもだまし」に見える
女性は会話や手芸で自然に馴染むが、男性は乗れないことが多い - 周りが女性ばかりで、居心地が悪い
デイの利用者は女性が多数。男性は肩身が狭い
この中で私が現場でいちばん重要だと感じるのは、「役割の喪失」です。男性の多くは、「お世話される客」として座らされるのが我慢ならない。逆に言えば——その場で“役割”を持てると、人が変わったように通い始めます。



やってはいけない「無理強い」
気持ちは分かります。でも、嫌がる父親を、力ずくで送り出すのは最悪の一手です。
無理強いが招く結果
・「もう二度と行かない」と、心を閉ざす
・プライドが傷つき、家族への不信感が残る
・一度こじれると、次のデイも受けつけなくなる
最初の印象が「無理やり連れて行かれた場所」になると、取り返しがつきません。だからこそ、入り方が大事なのです。
効く声かけと、送り出し方
ポイントは、「介護される場所」だと感じさせないこと。言葉の選び方を、少し変えるだけで反応が変わります。
言い換えの例
×「デイサービスに行こう」→ ○「リハビリに行こう」「運動しに行こう」
×「みんなと過ごそう」→ ○「お風呂に入ってこよう」(大きな風呂が好きな男性は多い)
×「介護の人が世話してくれる」→ ○「先生に体を診てもらおう」
「デイ=介護」ではなく「デイ=リハビリ・運動・入浴の場」と伝える。これだけでハードルが下がります。
もうひとつ。本人が信頼する人から勧めてもらうのも有効です。子の言うことは聞かなくても、かかりつけ医の「体のために運動したほうがいい」の一言なら、素直に従うことがよくあります。「先生に言われたから」は、男性のプライドを傷つけない、便利な理由づけです。
勝負は「最初の3回」
ここが、他の記事にはあまり書かれていない、いちばん大事な話です。
デイに通い始めても、最初の数回は「やっぱり行きたくない」と渋るのが普通です。ここで家族が「本人が嫌がるなら、やめようか」と引いてしまうと、そこで終わります。でも——現場の実感として、3回ほど続くと、多くの人がなじみ始めます。
最初の3回を乗り切るコツ
・施設に「本人の元の仕事・趣味」を事前に伝えておく
→ 職員が「○○がお得意なんですね」と、役割や話題を用意してくれる
・「1回だけ試してみて、合わなければやめていい」と約束する
→ 逃げ道があると、人は一歩を踏み出しやすい
・帰ってきたら、「どうだった?」より「お疲れさま」とねぎらう
施設に情報を渡しておくのは、本当に効きます。良い職員は、その人が「主役」になれる瞬間を作るのが上手です。元・営業マンなら聞き役に回してもらう、元・職人なら得意を披露してもらう。そういう小さな成功体験が、次に繋がります。



男性が続くデイの「見学チェック」
施設によって、雰囲気もプログラムも大きく違います。契約前に、必ず見学・体験を。男性目線で、ここを見てください。
- 男性の利用者が、何人かいるか
一人だけだと孤立しやすい。同性の仲間がいるかは大きい - リハビリ・運動の設備が充実しているか
マシンや個別リハがあると、男性は目的を持ちやすい - 「やらされ感」のないプログラムか
全員一律の歌・体操だけでなく、選べる自由度があるか - お風呂が広い・気持ちよさそうか
「風呂目当て」で通い続ける男性は、本当に多い - 職員が、本人を「一人の大人」として扱っているか
子ども扱い・タメ口は、男性のプライドを最も傷つける
デイの選び方そのものに迷ったら、チェックポイントをまとめた記事もあります(記事末の「あわせて読みたい」へ)。合う施設に出会えるかどうかで、結果は大きく変わります。
それでもダメなら「デイに固執しない」
いろいろ試しても、どうしてもデイが合わない人はいます。そのときは、「デイに通わせること」を目的にしないでください。
そもそもデイの目的は、①体を動かす(機能維持)②人と関わる(閉じこもり予防)③家族の休息です。この目的さえ達せられれば、手段はデイでなくてもいい。
| 体を動かしたい | 訪問リハビリなら、自宅にリハビリの専門職が来てくれる |
|---|---|
| 体調管理も心配 | 訪問看護で、看護師が定期的に状態を見てくれる |
| 外出・付き添いを頼みたい | 保険外の外出支援・付き添いサービスで、本人の好きな場所へ |
特に「集団は苦手だけど、外には出たい」という男性には、マンツーマンで付き添ってくれる保険外サービスが合うことがあります。囲碁仲間に会いに行く、昔通った店に行く——本人が「行きたい場所」に行けるのが強みです。介護保険の枠にとらわれず、選択肢を広げてみてください。
「閉じこもり」が、いちばん怖い
最後に、これだけは伝えたい。デイを嫌がるからと、家にこもらせ続けるのは危険です。
閉じこもりが招くもの
・足腰が急速に弱る(使わない筋肉は、驚くほど早く衰える)
・人と話さないことで、認知機能が落ちやすくなる
・気力が低下し、うつ状態に近づくことがある
私は理学療法士として、「動かないこと」で坂道を転げ落ちるように弱っていく方を、何人も見てきました。特に男性は、退職後に社会との接点を失い、一気に閉じこもりがちです。デイでも、訪問リハでも、散歩でもいい。「何かしら、外や人と関わり続ける」ことが、想像以上に大切です。



よくある質問
- 体験に行っても「二度と行かない」と言われました
- その施設が合わなかっただけかもしれません。デイは施設ごとに雰囲気が全く違います。1か所で諦めず、タイプの違う施設をもう一つ体験してみてください。リハビリ特化型、少人数型など、選択肢はいろいろあります。
- ケアマネに相談してもいいですか?
- ぜひ相談してください。「父が男性向けの施設を探している」「リハビリ重視のデイはないか」と具体的に伝えれば、本人に合いそうな施設を提案してくれます。デイ以外の代替サービスも、ケアマネが交通整理してくれます。
- 認知症があって、行くこと自体を理解できません
- 認知症がある場合は、また対応のコツが変わります。理屈で説得するより、自然な流れで誘う・その日の機嫌に合わせるのが基本です。詳しくは、下の「あわせて読みたい」の記事を参考にしてください。
- 無理に行かせなくても、いいのでしょうか?
- 「デイに行くこと」自体は目的ではありません。大事なのは、体を動かし、人と関わり、家族が休むこと。それが叶うなら、手段はデイでなくてもいいのです。ただし、家に完全に閉じこもるのだけは避けたいところです。
まとめ|「役割」を渡せば、男性は動く
- 男性が嫌がる根っこは「世話される側」への抵抗と、役割の喪失
- 無理強いは厳禁。一度こじれると、二度と行かなくなる
- 「デイ」ではなく「リハビリ・運動・お風呂」と言い換える
- 勝負は最初の3回。施設に本人の情報を渡し、役割を作ってもらう
- 見学では「男性がいるか」「やらされ感がないか」を見る
- 合わなければ訪問リハ・保険外の外出支援など、デイに固執しない
デイを嫌がる父親を前にすると、家族はつい「わがままだ」と思ってしまいます。でも、その裏には「まだ世話される側にはなりたくない」という、その人らしいプライドがあります。
そのプライドを、否定せずに活かす。「行かせる」のではなく「役割のある場所に、誘う」。この発想の転換が、いちばんの近道です。



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認知症がある場合の対応は、こちらへ。
参考にした情報(公的機関)
※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。デイサービス(通所介護)の利用には要介護認定が必要です。利用できるサービスの範囲は、担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険課にご確認ください。









