親の介護|何から始める? 現役ケアマネが教える「最初の7ステップ」

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「親が突然倒れて入院した」「医師から『退院後は介護が必要』と言われた」「親と離れて暮らしているけど、最近様子がおかしい」──ある日突然、親の介護は始まります。何から手をつければいいか分からず、頭の中が真っ白になる──これは、私がケアマネジャーとして毎月のように出会うご家族の姿です。

結論からお伝えします。介護開始の最初の1ヶ月でやるべき7ステップを順序立てて進めれば、必ず介護体制は立ち上がります。慌てて間違った順序で動くと数ヶ月の遠回りをしますが、正しい順序で進めれば、1ヶ月後には「介護のリズム」ができあがります。

そして覚えておいてほしいのは、介護は数年〜十数年続くマラソンだということ。最初の100メートルを全力疾走したら、必ず途中で倒れます。「6割の力で長く続ける」のが、本人にも家族にも最善の介護です。完璧を目指さず、できる範囲で少しずつ進めることを最優先に考えてください。

もう一つ大事な事実があります。それは、あなたは1人で介護をする必要はないということ。日本の介護保険制度は、家族の負担を社会全体で支えるために作られています。地域包括支援センター・ケアマネジャー・ヘルパー・看護師・医師──たくさんのプロが、あなたの代わりに動いてくれます。「自分が頑張る」より「プロを上手に使う」が現代の介護の正解です。

この記事では、現役ケアマネジャー&理学療法士として、親の介護開始時に必ずやるべきことを時系列の7ステップで完全解説します。読み終わるころには、「明日から何をすればいいか」が明確になるはずです。

この記事で分かること
  • 介護開始から1ヶ月で進めるべき7つのステップ
  • 要介護認定の申請方法と認定までの流れ
  • 失敗しないケアマネジャー選びのコツ
  • 介護費用の見通しの立て方と使える公的制度
  • 仕事と介護を両立させる介護休業・介護休暇の活用法
  • いざという時のための施設情報の集め方

目次

7ステップの全体像|「順序」が成功のカギ

まず、最初の1ヶ月で進める7ステップの全体像を確認しておきましょう。「同時に全部やる」ではなく「順序通り1つずつ」進めるのが鉄則です。前のステップが終わらないと次が動かない構造になっているので、焦らず順番に進めてください。

STEPやること時期
STEP 1現状把握+家族への共有初日〜3日以内
STEP 2医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談3日以内
STEP 3地域包括支援センターに連絡3日以内
STEP 4要介護認定を申請1週間以内
STEP 5ケアマネジャーを選定2週間以内
STEP 6ケアプラン作成+介護サービス開始3〜4週間以内
STEP 7家族会議+お金・仕事・施設の備え1ヶ月以内・並行

ここから、各STEPを具体的に解説していきます。「明日から何をすればいいか」が明確になるよう、実践的なポイントを盛り込みました。

介護開始3日以内に進めるSTEP 1〜3

介護が始まった最初の3日は、「現状把握」と「相談窓口への接続」が最優先です。ここで動きが遅れると、退院後の介護体制構築に大幅な遅れが出ます。逆に、この3日でしっかり動けば、その後の流れが格段にスムーズになります。STEP 1〜3を解説します。

STEP 1|現状把握とメモを取る

介護初日にまずやるべきは、A4ノート1冊を用意して、医師から聞いた内容を全部書き留めることです。病名・予後・必要な医療処置・退院の見込み時期・介護必要度──これらを記録しておくと、後でケアマネに状況を伝える時に役立ちます。

同時に、兄弟・配偶者にも状況を共有してください。「あの時、自分だけ知らされなかった」というトラブルは、最初の情報共有不足から始まります。LINEグループを作って情報を一元化するのが、トラブル予防の最善策です。

STEP 2|医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談

入院中であれば、必ず医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談してください。MSWは病院に常駐する退院後の介護体制を一緒に考えてくれる無料の相談員で、病棟看護師に「MSWに相談したい」と伝えれば紹介してもらえます。

MSWは退院後の選択肢(在宅・施設・療養型病院)を整理し、地域のケアマネ事業所も紹介してくれます。「家族構成・住居・介護に使える時間・経済状況」を伝えれば、最適なルートを提案してくれる頼れる存在です。

STEP 3|地域包括支援センターに連絡

入院していない場合や退院後の介護準備として、地域包括支援センターへの連絡は超重要です。親が住む地域の地域包括支援センターに電話するだけで、要介護認定の申請サポート・ケアマネ紹介・地域の介護サービス情報まで一括でサポートしてくれます。

完全無料で、介護のあらゆる相談に乗ってくれる「介護の総合窓口」です。「親の介護が始まりそうで、何から始めればいいか分からない」と素直に伝えてください。地域包括支援センターは、各市区町村に必ず1つ以上設置されており、親の住所地の窓口に連絡するのがルールです。

⚠️ よくあるNG行動

「とりあえず仕事を辞めて介護に専念しないと」と、慌てて離職するご家族が多いです。これは絶対にやってはいけないNG行動。介護は数年〜十数年続くため、収入を失うと経済的に破綻します。仕事を辞める前に、まず介護休業(最大93日・給与の67%支給)の活用を検討してください。詳しくはSTEP 7で解説します。

1〜2週間以内に進めるSTEP 4〜5

3日以内の緊急対応が終わったら、次の1〜2週間は「介護保険サービスを使うための準備期間」です。具体的には、要介護認定の申請とケアマネジャーの選定を進めます。この2つが揃わないと、訪問介護やデイサービスといった介護保険サービスは使えません。STEP 4〜5を解説します。

STEP 4|要介護認定を申請する

要介護認定の申請は、申請から認定結果が出るまで約30日かかります。1日でも早く申請するのが鉄則です。申請窓口は市区町村の介護保険課ですが、地域包括支援センター経由でも申請できます。地域包括センターに依頼すれば、書類の書き方からサポートしてくれるので、初心者にはこちらがおすすめです。

申請時に必ず準備するものは、介護保険被保険者証・健康保険証・マイナンバーが分かるもの・主治医の連絡先の4点。主治医意見書は市区町村から直接医師に依頼してくれるので、家族が用意する必要はありません。

申請後、認定調査員が自宅を訪問して本人の状態を聞き取ります。この時、家族が同席して「本人の最も困っている状態」を具体的に伝えることが、適切な介護度認定につながります。本人は調査員の前で気を張って良く見せることが多いので、家族が現実を伝える役割を担うのが大事です。

STEP 5|ケアマネジャーを選定する

ケアマネジャー(ケアマネ)は介護生活の質を左右する最重要パートナー。地域包括支援センターから3〜5事業所のリストをもらい、複数のケアマネと面談して選ぶのが理想です。連絡の取りやすさ・提案力・人柄の3点で判断してください。

確認すべきポイント判断基準
連絡の取りやすさ電話・メールに即対応、24時間連絡可能
提案力複数の選択肢を提案してくれる
専門分野看護師・PT出身など、本人の状態に合う背景
担当人数35件以下が目安(多すぎると対応が雑に)
人柄・相性家族が話しやすい、温かい人柄

「合わないケアマネ」は介護生活の最大のストレス要因になります。少しでも違和感があれば、いつでも変更できると覚えておいてください。ケアマネ変更は利用者の権利で、何度でも実行可能です。

1ヶ月以内に進めるSTEP 6〜7

要介護認定の結果が出たら、いよいよ介護保険サービスの実利用がスタートします。同時に、介護を長期的に続けるための「家族の体制づくり」も進めます。この1ヶ月で介護のリズムが定着し、「自分1人で抱え込む」状態から「プロと家族のチームで支える」状態に移行できます。STEP 6〜7を解説します。

STEP 6|ケアプラン作成と介護サービスの開始

担当ケアマネと相談してケアプラン(介護サービスの計画書)を作成します。週何回どのサービスを使うか、月額の負担はいくらか、本人の希望はどう反映するか──これらを書面にまとめたものがケアプランです。家族の希望は遠慮せず全部伝えてください。「家族のレスパイト時間が欲しい」「本人にリハビリを受けさせたい」「夜間も対応してほしい」など、要望は具体的なほどケアマネが動きやすくなります。

使える主な介護保険サービスは以下の通り。本人の状態と家族の希望に応じて、組み合わせて使います。

  • 訪問介護(ヘルパー):自宅で食事・入浴・排泄の介助
  • 訪問看護:看護師による医療的ケア
  • デイサービス:日帰りで施設に通い、入浴・食事・レク
  • デイケア:日帰りで本格的なリハビリ
  • ショートステイ:数日〜2週間の宿泊(家族のレスパイト)
  • 福祉用具レンタル:介護ベッド・車椅子・歩行器など月数百円〜
  • 住宅改修:手すり設置・段差解消など最大20万円助成

STEP 7|家族会議+お金・仕事・施設の備え

サービスが始まったら、最後のSTEP 7として「家族会議」と「長期戦への備え」を進めます。介護は数年〜十数年続くマラソン。最初の1ヶ月で長期的な体制を整えておくことが、家族が倒れずに介護を続けるための土台になります。

まず家族会議を開いて、兄弟・配偶者と一堂に会して介護の役割分担を明確化します。話し合うべきは、誰が主介護者になるか、金銭負担はどう分けるか、緊急時の連絡網、施設入居の判断基準の4つ。口約束ではなく必ず書面化することで、後の家族トラブルを防げます。

並行してお金と仕事の備えも進めます。介護費用の月額相場(在宅で7〜20万円、施設で8〜30万円)を把握し、親の年金内で賄えるかを計算。同時に、介護休業(最大93日・給与67%支給)と介護休暇(年5日)を活用して、仕事を辞めずに介護を続ける体制を整えます。介護離職は40代で生涯年収3,000万円の損失になるので、絶対に避けてください。

📝 家族会議で決めるべき4項目
  • 主介護者・副介護者を決める(メインで動く人+サブ)
  • 金銭負担の配分(経済力と時間負担で公平に)
  • 緊急時の連絡網(誰がどこに連絡するか)
  • 施設入居の判断基準(どんな状態になったら検討するか)

そして、知らないと損する公的制度・補助金も全部申請してください。代表的なのは以下の5制度です。

制度内容申請窓口
高額介護サービス費月の自己負担上限超過分が還付市区町村介護保険課
障害者控除要介護認定者は税法上の障害者控除(27〜75万円)市区町村
医療費控除年間10万円超の医療費+介護費が控除対象確定申告
介護休業給付金介護休業中、給与の67%を最大93日支給勤務先→ハローワーク
住宅改修費手すり設置等が最大20万円助成ケアマネ経由

これらは家族が自分で申請する必要があります。とくに「障害者控除対象者認定書」は、要介護認定者なら市区町村に申請するだけで取得でき、年間数万〜十数万円の節税につながります。それなのに知らずに取得していない家族が圧倒的に多いので、絶対に確認してください。

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7ステップと並行で「施設という選択肢」を持っておく

STEP 1〜7を進めながら、「施設という選択肢」を持っておくことは、家族を守る最重要の保険です。在宅介護を続けても、状態の悪化や家族の限界で施設入居が必要になることは珍しくありません。その時に「情報がない」「どこに相談すればいいか分からない」では、本人にも家族にも最悪の選択肢しか残りません。

施設の主な選択肢は4種類。それぞれ費用と特徴が大きく違います。

施設タイプ月額入居一時金特徴
特別養護老人ホーム(特養)8〜13万円0円公的施設・要介護3以上・待機長い
介護老人保健施設(老健)9〜15万円0円在宅復帰目指す中間施設
介護付き有料老人ホーム15〜30万円0〜数千万円サービス手厚い・看取り対応も
サービス付き高齢者向け住宅13〜25万円0〜数十万円自立度高めの方向け

注目してほしいのは、特養なら入居一時金0円・月額10万円程度で、親の年金内に収まるケースが多いという事実。「施設は高額」というイメージは、有料老人ホームの話で、特養なら経済的にも現実的な選択肢になります。ただし特養は人気で半年〜2年待ちが普通なので、早めの情報収集と申し込みが鉄則です。

施設情報の収集は、無料の資料請求から始めるのが効率的です。「いざという時の選択肢」として情報だけ持っておくだけでも、家族の精神的余裕が大きく違います。STEP 7の「長期戦への備え」の一環として、ぜひ並行で進めてください。

関連記事|あわせて読みたい5本

本記事と関連の深い記事を5本まとめました。各STEPで気になる項目を深掘りしたい方は、ぜひ参考にしてください。

まとめ|7ステップで動けば必ず介護体制は立ち上がる

親の介護は、ある日突然始まる人生最大級のイベントです。最初の混乱は誰もが経験するものですが、時系列の7ステップに沿って動けば、1ヶ月後には必ず介護体制が立ち上がります。「明日何をすればいいか」だけに集中して、1日1つずつ進めてください。

🍀 親の介護スタート 7ステップ総まとめ
  • STEP 1|現状把握とメモを取る(3日以内)
  • STEP 2|医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談(3日以内)
  • STEP 3|地域包括支援センターに連絡(3日以内)
  • STEP 4|要介護認定を申請(1週間以内)
  • STEP 5|ケアマネジャーを選定(2週間以内)
  • STEP 6|ケアプラン作成+介護サービス開始(3〜4週間以内)
  • STEP 7|家族会議+お金・仕事・施設の備え(1ヶ月以内・並行)

そして最も大事なメッセージを最後に。あなたは1人で介護をする必要はありません。地域包括支援センター・ケアマネ・ヘルパー・看護師・医師・FP・施設のスタッフ──たくさんのプロが、あなたを支えるために存在しています。「自分が頑張る」より「プロを上手に使う」が、本人にも家族にも最善の介護です。今日から1つずつ、できることを進めていきましょう。

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この記事を書いた人

佐藤 あゆみのアバター 佐藤 あゆみ 理学療法士/ケアマネ

現役ケアマネジャー・理学療法士。回復期リハビリ・訪問看護・訪問リハビリ・通所リハビリ・介護医療院・介護老人保健施設で15年以上勤務後、介護支援専門員(ケアマネ)の資格を取得。「リハビリのプロ × 介護のプロ」のダブル資格で、ご家族に寄り添う介護情報を発信中。

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