「毎日の着替えが大変。介護用パジャマにすればラクになる?」——その答えは「イエス。ただし、親の状態に合ったものを選べば」です。
介護用パジャマは、前開き・マジックテープ式などで着替えの負担を大きく減らせます。でも、選び方を間違えると「高かったのに使わない」ことに。そして意外に大事なのが、「そもそも介護用パジャマが要らない人もいる」ことと、オムツいじり防止の“つなぎ服”は安易に選んではいけないという点です。
私は理学療法士・介護支援専門員として、たくさんのご家庭の「着替え」を見てきました。この記事では、状態別の選び方と具体的な商品に加えて、他サイトが書かない「買う前に知るべき注意点」まで、正直にお伝えします。
リハウルフまず確認|親に介護用パジャマは本当に必要?
いきなりですが、全員に必要なわけではありません。親の状態によっては、普通の前開きパジャマで十分です。無理に買い替える前に、まずどの段階かを見極めましょう。
| 親の状態 | 向いているもの |
|---|---|
| 自分で着替えられる/見守りで可能 | 市販の前開きパジャマで十分。ボタンが不便ならマジックテープ式を |
| 腕を通すのに介助が要る(軽〜中介助) | 前開き+マジックテープのセパレート型(上下別) |
| 寝たきり・全介助/おむつ交換が頻回 | 寝たまま着替えられるフルオープン型・おむつ交換口付き |
ポイントは、状態が上がると必要な機能が変わること。今は自立していても、いずれ介助が必要になります。だからこそ「まとめ買い」はせず、その時々の状態に合わせて2〜3着ずつ買い足すのが賢い使い方です。寝たきりを見越して高機能なものを大量に先買いすると、体型やサイズが変わって使えなくなる——現場でよくある“もったいない”です。
介護用パジャマと普通のパジャマの違い
介護用パジャマが「着替えをラクにする」のは、次のような工夫があるからです。
- 前開き+マジックテープ:ボタンをはめる手間がなく、寝たままでも留められる
- ゆったりした袖・襟ぐり:麻痺のある腕も通しやすい
- 背中のシワが出にくい作り:寝たきりでも床ずれ(褥瘡)ができにくい
- おむつ交換口:全部脱がせなくても交換できる(重介助向け)
選び方6つのポイント
- ① 留め具はマジックテープが基本ボタンは指先の力が要り、介助者の手間も増える。ただし「ボタンを留める動作」がリハビリになる人は、あえてボタンを残す選択も。
- ② 前開きを選ぶ頭からかぶるタイプは、腕を上げられない人には不向き。寝たきりなら前開きは必須。
- ③ サイズは「ややゆったり」肩・襟ぐり・お尻まわりに余裕を。締め付けは着替えを難しくし、床ずれの原因にも。
- ④ 素材は季節と肌で選ぶ汗をかくなら綿・ガーゼ、乾きやすさ重視ならポリエステル混。肌が弱い親には縫い目の当たりが少ないものを。
- ⑤ 洗濯のしやすさ毎日洗うもの。乾きが速く、乾燥機に耐える生地だと家族がラク。
- ⑥ 医療処置があるか胃ろう・尿管などがある場合は、その位置が開けられるファスナー式を検討。



状態別のおすすめ|タイプで選ぶ
軽〜中介助|前開き・マジックテープのセパレート型
自分で腕は動かせるが、着替えに手助けが要る段階。上下別(セパレート)で、上着が前開き・マジックテープのものが扱いやすい。まずここから試すのが標準です。
寝たきり・全介助|寝たまま着せられるフルオープン型
ほぼ寝たままで生活し、おむつ交換も頻回な段階。肩から裾まで大きく開き、寝たまま体の下に通せるタイプが介助を大きくラクにします。おむつ交換口があるとさらに手間が減ります。
おむつ交換口や排泄ケアの考え方は、排泄ケア|おむつにする前にやる3日間の記録と“その後”の現実もあわせて読むと、パジャマ選びの判断がしやすくなります。
季節での選び分け
高齢の親は体温調節が苦手で、暑さ寒さをうまく訴えられないこともあります。パジャマの厚みも季節で見直してください。
- 夏:汗をかくと肌トラブルの元。吸湿性の高い綿・ガーゼの薄手を。寝汗が多いなら替えを多めに。
- 冬:厚着させすぎると寝返りや着替えがしにくくなる。厚手1枚より、掛け物で調整するほうが動きやすい。
- 通年:エアコンの効いた室内なら、季節を問わず薄手の前開きが扱いやすい。
注意|“つなぎ服”は安易に選ばない
ここは、他サイトがほとんど触れない大事な話です。認知症などでおむつを自分で外してしまう親に、「上下がつながって本人が脱げない“つなぎ服(介護用つなぎ)”」を勧める情報を見かけます。でも、これは慎重に考えてください。
つなぎ服は「身体拘束」にあたりうる
本人の意思で脱げないようにする“つなぎ服”は、厚生労働省の資料でも身体拘束の一例として挙げられています。施設では原則禁止。在宅でも、本人の尊厳や不快感(かゆみ・皮膚トラブルのサインを訴えられない等)を考えると、最終手段です。
おむついじりの背景には、「かゆい」「濡れて不快」「便が出ていて気持ち悪い」など本人なりの理由があることが多い。つなぎで“できなくする”前に、交換のタイミングを見直す、肌トラブルを確認する、日中は普通のパジャマにする、といった工夫を先に試してください。判断に迷うときは、ケアマネや訪問看護師に相談を。



パジャマより先に|着替えは「脱健着患」でラクになる
実は、パジャマを買い替えなくても、着せ方の順番を変えるだけで着替えはぐっとラクになります。介護の基本、「脱健着患(だっけんちゃっかん)」です。
脱健着患のルール
- 脱ぐときは「健(けん)」=動く方・元気な方から
- 着るときは「患(かん)」=麻痺や痛みのある方から
こうすると、動かしにくい腕を無理に引っぱらずに済み、本人の痛みも介助の負担も減ります。
麻痺や関節の痛みがある親の着替えは、この一手間で驚くほど変わります。良いパジャマ選びと合わせて、ぜひ覚えておいてください。
もう一つ、寝たきりの方の上着を替えるときのコツ。先に体の下でパジャマを丸めておき、体を左右に少し傾けながら通すと、一人でも交換しやすくなります。無理に持ち上げようとせず、「転がす」イメージで。腰を痛めない介助にもつながります。うまくいかないときは、訪問看護師やヘルパーに一度やって見せてもらうと、コツがつかめます。
お得な買い方と、枚数の目安
- 3〜5着でローテーション:毎日洗うので、洗い替えを確保。乾きにくい季節は多めに。
- 最初は少数で試す:本人が着てくれるか、サイズが合うかを確認してから買い足す。
- ネット通販が種類豊富:Amazon・楽天は介護用パジャマの品ぞろえが多く、サイズ展開(S〜3L)も広い。
なお、パジャマは介護保険の福祉用具(レンタル・購入補助)の対象外です。全額自費になりますが、そのぶん自由に選べます。保険で借りられるもの・戻るものとの線引きは福祉用具レンタル完全ガイドで整理しています。
よくある質問
- 普通のパジャマではだめですか?
- 自分で着替えられる段階なら、普通の前開きパジャマで十分です。介助が必要になってきたら、マジックテープ式や前開きの介護用に切り替えると負担が減ります。
- 介護用パジャマは介護保険で買えますか?
- 対象外です。衣類は福祉用具の購入補助・レンタルに含まれず、全額自費になります。
- おむついじりが激しいのですが、つなぎ服を使うべき?
- 安易に使わないでください。つなぎ服は身体拘束にあたりうるため最終手段です。まず不快の原因(かゆみ・交換のタイミング等)を見直し、ケアマネや訪問看護師に相談を。
- サイズはどう選べば?
- ややゆったりを選びます。締め付けは着替えを難しくし、床ずれの原因にもなります。肩・襟ぐり・お尻まわりに余裕のあるものを。
まとめ|状態に合わせて、賢く選ぶ
この記事の要点
- 自立段階なら普通の前開きで十分。まとめ買いせず、状態に合わせて買い足す。
- 基本は「前開き+マジックテープ」。寝たきりはフルオープン・おむつ交換口付き。
- サイズはややゆったり。締め付けは着替えを難しくし床ずれの元。
- つなぎ服は身体拘束にあたりうる。原因を見直すのが先。
- 買い替え前に「脱健着患」の着せ方を試すだけでも負担は減る。
介護用パジャマは、毎日の着替えを確かにラクにしてくれる頼もしい味方です。ただ、いちばん大事なのは「親の状態と気持ちに合っているか」。安全と便利さだけでなく、本人が心地よく着られるものを選んであげてください。それが、着替えを“作業”から“穏やかな時間”に変えてくれます。
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参考にした情報(公的機関)
※本記事の内容は、2026年7月時点の情報にもとづく一般的な選び方です。商品名・仕様は変更される場合があるため、購入時は各販売サイトで最新の情報をご確認ください。身体拘束の判断に迷う場合は、ケアマネジャー・訪問看護師にご相談ください。












