認知症で行方不明になった人は、1年間で18,121人。
そのうち、491人が亡くなっています。
(令和6年・警察庁)
リハウルフ「うちの親に限って」と思いたい気持ちは、痛いほど分かります。
でも、1日あたり約50人が行方不明になっているのが現実です。そして見つかった方の多くは、届出を出した「その日」のうちに見つかっています。
行方不明者(令和6年)
亡くなった方
見つかった方
最初の24時間が、すべてです。
届出当日に見つかった方が12,476人。2〜3日以内が4,156人。時間が経つほど、事態は深刻になります。
だから対策グッズに求めるべきは、かっこよさでも、多機能さでもありません。
「いなくなった、と気づいた瞬間に、居場所が分かること」——ただ、それだけです。
その前に|「徘徊」という言葉について
本題に入る前に、専門職として、ひとつだけ。
いま、多くの自治体や認知症の当事者団体が、「徘徊」という言葉を使わなくなっています。「ひとり歩き」「外出」などに言い換える動きが広がっています。
理由は、「徘徊」が「あてもなく、うろうろ歩き回る」という意味だからです。
でも、本人には「目的」があります
- 「会社に行かなきゃ」——現役時代の記憶で動いている
- 「子どもを迎えに行かなきゃ」——40年前の記憶で動いている
- 「家に帰らなきゃ」——今いる家を、自分の家だと認識できていない
- トイレを探している——場所が分からず、家中を歩き回る
本人の中では、すべて筋が通っています。あてもなく歩いているのではありません。



なぜこの話をするかというと、「なぜ出て行くのか」が分かれば、グッズを買う前に打てる手があるからです。
夕方に決まって出て行くなら、その時間に一緒にお茶を飲む。トイレを探しているなら、ドアに「トイレ」と大きく貼る。それだけで収まることが、実際にあります。
【買う前に】自治体の無料サービスを、先に使ってください
グッズを買う前に、ほとんどの自治体が、無料または低額の制度を用意しています。知らずに買っている方が、あまりにも多い。
- SOSネットワーク(見守りネットワーク) 行方不明時に、警察・消防・タクシー会社・コンビニ・郵便局などに、一斉に情報が流れる仕組みです。事前登録が必要。これは絶対に登録しておいてください。無料です。
- 見守りシール(QRコード)の配布 多くの自治体が無償で配布しています。衣類や靴に貼るQRコードで、発見者がスマホで読み取ると、家族に連絡が届く仕組み。
- GPS端末の購入・利用料の助成 GPS機器の費用を助成している自治体があります。「うちの市はやっていない」と決めつけず、必ず確認してください。
地域包括支援センターに電話して、こう聞いてください。
「認知症の見守り登録と、GPSの助成はありますか?」
この一言で、地域で使える制度を全部教えてくれます。無料です。
徘徊対策グッズの5タイプ
| ① GPS端末 | 居場所を追える。出て行った「後」の切り札 |
|---|---|
| ② 開閉センサー | 玄関が開いたら通知。出て行った「瞬間」に気づける |
| ③ 見守りカメラ | 家の中の様子が分かる。動きを検知して通知 |
| ④ QRコード/シール | 発見者から連絡が来る。本人が身につけるだけ |
| ⑤ 玄関の工夫 | 補助錠・チャイム。閉じ込めにならない範囲で |
組み合わせが、基本です
「② 出て行ったことに気づく」+「① どこにいるか分かる」——この2つが揃って、初めて機能します。
GPSだけでは、「いなくなったこと」に気づけません。気づいたときには、もう3時間経っている。それでは遅いのです。
徘徊対策グッズおすすめ5選
① まずこれ|GPS BoT
小型・軽量で、ポケットやカバンに入れておくだけ。スマホのアプリで、リアルタイムに居場所が分かります。
選ぶ基準は「電池がどれくらい持つか」。充電を忘れたGPSは、ただの石ころです。ここが最大の落とし穴です。
② 声をかけられる|みもりGPS
GPSに加えて、本人に音声で声をかけられるのが特徴です。
これが効く場面があります。見つけたとき、本人はたいてい不安でいっぱいです。そこに家族の声が届けば、その場にとどまってくれる可能性があります。
③ 出て行った瞬間に気づく|SwitchBot 開閉センサー
これが、実はいちばん重要かもしれません。
玄関ドアに貼っておくだけ。開いた瞬間に、スマホへ通知が飛びます。2,000円前後です。
「気づくまでの時間」を、数時間から数分に縮められます。費用対効果は、GPSよりむしろ高いかもしれません。
④ 家の中の様子も|TP-Link Tapo C200
3,000円前後の見守りカメラ。動きを検知して通知してくれます。夜間、寝室から出たことも分かります。
ただし寝室やトイレには、絶対に設置しないでください。プライバシーの問題であり、本人の尊厳の問題です。玄関・廊下・リビングまでにとどめてください。
⑤ 発見者から連絡が来る|見守りQRコードシール
衣類や靴、杖に貼っておくと、発見した人がスマホで読み取り、家族に連絡が届きます。
GPSと違って充電が要りません。これが強い。GPSを持たずに出て行っても、靴に貼ってあれば機能します。
※前述のとおり、多くの自治体が無償配布しています。まず自治体に確認してください。
組み合わせ方|状況別の正解
| まだ出て行かないが心配 | 自治体のSOSネットワークに登録+QRシール 費用ゼロで始められます |
|---|---|
| ときどき出て行く | 開閉センサー+GPS 「気づく」と「追う」をセットで |
| 頻繁に出て行く/夜間も | 開閉センサー+GPS+見守りカメラ+QRシール この段階では、施設も並行して検討を |
親に「監視されている」と思わせないコツ
ここでつまずくご家族が、非常に多いです。
- 「あなたのため」ではなく「私のため」と言う
「お父さんが心配だから」は、プライドを傷つけます。
「私が心配性で、落ち着かないの。持っててくれると助かる」——助ける側に回してあげてください。これが、いちばん受け入れられます。 - GPSは「持ち物」に仕込む 本人に「これを持って」と渡すと、置いていかれます。いつも持つカバン、財布、靴に、最初から入れておく。
- 靴に貼る(これが確実) 裸足で出る人は、まずいません。靴にQRシールを貼っておくのが、いちばん確実です。普段履きの靴、全部に貼ってください。
- カメラは、寝室・トイレに置かない ここは絶対に守ってください。本人の尊厳の問題であり、後で家族関係が壊れます。



それでも、家族だけでは限界があります
グッズを揃えても、「気づいて、追いかける人」が必要です。それは結局、家族です。
夜中に通知が鳴る。飛び起きて、追いかける。それが週に何度も続いたら、あなたが先に倒れます。
- 夜間に出て行こうとする(家族が眠れない)
- 目を離すと、数分で外に出てしまう
- 実際に、一度でも行方不明になったことがある
- 介護している人が、体調を崩し始めている
「一度でも行方不明になった」——これは決定的なサインです。
次があるかもしれない。そして次は、491人のうちの1人になるかもしれない。
認知症の方を受け入れる施設には、グループホームをはじめ、いくつもの選択肢があります。「まだ早い」と思っていても、情報だけは集めておいてください。
よくある質問
- GPSを持たずに出て行ってしまいます
- 靴に、QRシールを貼ってください。裸足で出る人は、まずいません。GPSは「持ってもらう」必要がありますが、靴のシールは「持たせる」必要がありません。普段履く靴すべてに貼るのが鉄則です。
- 玄関に鍵をかけて、閉じ込めてもいいですか?
- おすすめしません。本人が出られないと分かると、混乱や興奮が強まることがあります。また、火災など緊急時に逃げられません。「出られないようにする」のではなく、「出たことに気づく」発想に切り替えてください。だから開閉センサーなのです。
- 行方不明になったら、まず何をすればいいですか?
- ためらわず、すぐ110番してください。「大げさかも」と思わなくていいです。データが示すとおり、届出当日に見つかる方が圧倒的に多いのです。時間が経つほど、危険は増します。あわせて、地域包括支援センターにも連絡を。
- 自治体の助成は、どこで聞けばいいですか?
- 地域包括支援センターです。「認知症の見守り登録と、GPSの助成はありますか」と聞いてください。担当ケアマネジャーがいれば、ケアマネでも構いません。
- グッズを使えば、行方不明を防げますか?
- 防げるとは言えません。グッズは「出て行くこと」を止めるものではなく、「早く見つけるための道具」です。同時に、なぜ出て行くのか(時間帯、きっかけ)を観察し、ケアマネや主治医に相談してください。グッズは、対策の一部でしかありません。
まとめ|最初の24時間が、すべてを分けます
- 認知症による行方不明は年間18,121人、うち491人が死亡(令和6年・警察庁)
- 見つかる方の多くは「届出当日」。早さがすべて
- 買う前に、自治体の無料制度(SOSネットワーク・QRシール・GPS助成)を確認する
- グッズは「気づく(開閉センサー)」+「追う(GPS)」の組み合わせが基本
- 靴にQRシールが、いちばん確実(充電不要・持たせる必要なし)
- 導入は「あなたのため」ではなく「私のため」と伝える
- 一度でも行方不明になったら、施設も検討する段階
最後に、もう一度だけ言わせてください。
491人。これは統計の数字ではなく、491の家族の話です。
2,000円の開閉センサーひとつで、防げるかもしれない。今日、地域包括支援センターに電話するだけで、無料のシールがもらえるかもしれない。
「うちはまだ大丈夫」と思っている、今のうちに動いてください。



あわせて読みたい
- 親の見守りカメラおすすめ8選|選び方を解説【2026年版】
カメラの選び方は、こちらで詳しく。 - 親が一人暮らしで心配な時の見守り体制|完全ガイド
離れて暮らしている方は、こちらを。 - 認知症の親が入れる施設|タイプ別の選び方と費用
施設を検討する段階になったら。
参考にした情報(公的機関)
※統計は令和6年(2024年)の警察庁公表資料にもとづきます。
※自治体の助成・見守り制度の内容は市区町村により異なります。お住まいの地域包括支援センターにご確認ください。商品の価格・仕様は変更される場合があります。














