「電話が鳴って、お父さんが倒れたって」「お母さんが転んで救急車で運ばれた」──今日、あなたがこのページを開いているなら、まさにその瞬間かもしれません。
私はケアマネジャーとして、何百組ものご家族を「親の入院当日」から支援してきました。この日の動き方が、その後の介護生活の8割を決めます 。逆にいえば、正しい順番さえ知っていれば、混乱の中でも家族は動けます。
この記事では、現役ケアマネとして「入院当日にやるべきこと」を時系列で完全ガイドします。深呼吸して、上から順番に進めてください。
まず1分|深呼吸して、これから読んでください
電話を受けた直後、誰もがパニックになります。でも、まず1分だけ深呼吸を。
あなたが今やってはいけないこと
- ❌ ネットで延々と症状を検索する
- ❌ 兄弟全員に動揺した電話をかける
- ❌ 仕事を放り出して即座に新幹線に乗る
- ❌ 「最悪の事態」を想像する
代わりにやるべきこと
- ✅ 病院から「容体・搬送先・面会の可否」を聞く
- ✅ 自分の予定(仕事・家族・帰省手段)を整理
- ✅ この記事を最後まで読む
入院当日にやるべきことは、 意外とシンプル です。
ステップ① 病院に向かう前に確認すべき5つのこと
慌てて家を飛び出す前に、5分だけ電話で確認しておくことがあります。
確認① 搬送先の病院名・住所・電話番号
メモして家族グループLINEで共有。後で家族が合流する時に必要。
確認② 容体(緊急性)
「すぐ来てください」と言われたら、最速で。「明日でいい」なら準備して翌日でもOK。
確認③ 必要な持ち物
病院から指示があるはず。健康保険証、本人確認書類、印鑑、着替え、洗面用具など。
確認④ 親本人の意識・受け答えの様子
意識があるか、会話できるか。これが今後の方針判断に重要。
確認⑤ 担当医・病棟・面会時間
到着時に誰を訪ねればいいかを聞いておく。
ステップ② 病院に持っていくものリスト
混乱の中でも忘れないように、必須アイテムをまとめます。
親の物(家から持参)
- 健康保険証・介護保険被保険者証
- お薬手帳(重要:今飲んでいる薬の情報)
- 印鑑(手術同意書等で必要)
- 現金1〜3万円(病院売店・タクシー代)
- 着替え(パジャマ・下着3〜5日分)
- 洗面用具・タオル・ティッシュ
- スリッパ
- 老眼鏡・補聴器(あれば)
自分の物
- スマホ+充電器(モバイルバッテリーも)
- 筆記用具・メモ帳
- 自分用の軽食・飲み物
- 印鑑(家族の同意書用)
- ハンカチ・ティッシュ
病院で受け取る・揃える物
- 入院案内書類
- 手術・治療の同意書
- 個室/大部屋の選択書類
ステップ③ 病院到着後にやること(時系列)
到着してから30分〜2時間でやることを順番に。
0〜30分:医師との面談
担当医(または当直医)から、現在の状態・治療方針・入院期間の見通しを聞きます。
必ず聞くべき5つの質問
- 「今の病状の要点を教えてください」
- 「今後どんな治療が必要ですか」
- 「入院期間はどれくらいの見込みですか」
- 「リハビリは必要ですか」
- 「退院後、自宅に戻れますか or 介護が必要になりますか」
メモは必ず取る
医師の説明は専門用語が多く、後で「あれ、何だっけ」になりがち。スマホの録音機能(医師の許可を得て)も活用を。
30分〜1時間:入院手続き
入院窓口で書類を記入。病院によっては「身元引受人」「保証人」の欄があります。家族の中で誰が担当するか決めておくとスムーズ。
1〜2時間:本人と面会・家族への連絡
本人と短時間でも面会を。安心させる声かけを大切に。その後、家族グループLINEで状況を共有。
ステップ④ その日のうちに兄弟・家族に共有すべき7項目
家族グループLINEに、以下を文字で共有しましょう。「言った・言わない」を防ぐためです。
【父(母)入院連絡】
1. 病院名:○○病院
2. 病棟・部屋:○○病棟3階
3. 担当医:○○先生
4. 病状:○○○○
5. 治療方針:○○○○
6. 入院期間見込み:約○週間
7. 面会可能時間:○時〜○時
明日の動き:
・○○(私):明日朝も病院へ
・○○(兄):仕事終わりに駆けつけ
・○○(妹):週末に新幹線で
費用負担・退院後の話は、落ち着いてから家族会議で。
このフォーマットを使えば、混乱の中でも冷静に共有できます。
ステップ⑤ 入院当日に「絶対に決めない」3つのこと
慌てて決めると後悔する3つを、今日は 意識的に保留 します。
絶対に決めないこと① 退院後の住まい(在宅 or 施設)
今日は「治療中」。退院後の話は、退院の見通しが立ってから。
絶対に決めないこと② 仕事を辞めるかどうか
「今すぐ辞めなきゃ」は完全な誤解。介護休業・介護休暇など制度を使い倒せば、辞めずに乗り切れます。
絶対に決めないこと③ お金の負担割合
兄弟との金銭の話は、感情が落ち着いてから。今日は「みんなで支えよう」のムードだけ。
ステップ⑥ 翌日にやること(落ち着いてから)
入院当日が終わったら、翌日からはこちらに進みます。
翌日① 主治医の説明をしっかり聞く
病状・治療計画・退院の見通しを、改めて時間を取って説明してもらう。可能なら家族複数人で同席。
翌日② 病院の医療相談員(MSW)に連絡
ほとんどの病院に「医療相談員(MSW=メディカル・ソーシャル・ワーカー)」がいます。入院から退院まで家族をサポートしてくれる超強力な味方 。
MSWに相談できること
- 介護保険の申請
- 退院後の住まい・施設探し
- 自宅復帰のためのリハビリ施設
- 高額医療費の制度
- 公的補助の活用
「医療相談室」を訪ねて、「父(母)の今後について相談したい」と伝えればOK。完全無料。
翌日③ 地域包括支援センターに電話
親が住む地域の 地域包括支援センター に連絡。介護保険申請の窓口です。
電話で「父(母)が入院しました。今後の介護について相談したい」と伝えるだけ。
翌日④ 兄弟で「役割分担」のたたき台を作る
LINE会議で十分。誰が窓口(キーパーソン)になるか、月いくらまでお金を出せるか、通いの頻度はどうするか、を仮決め。
ステップ⑦ 入院中にやっておくべき「退院準備」
入院期間(数日〜数週間)の間に、退院後の体制を整えます。
やっておくこと① 介護保険申請
入院中に 要介護認定を申請 。認定が出るまで約1ヶ月かかるので、早ければ早いほど良い。包括センターに頼めば代行可能。
やっておくこと② ケアマネ事業所のリサーチ
退院後の介護が必要になりそうなら、ケアマネ事業所を3〜5件リサーチ。包括センターに「退院後のケアマネを探している」と相談を。
やっておくこと③ 自宅環境の整備
退院後すぐに必要になる物:
- 介護ベッド(介護保険レンタル可)
- 手すりの設置(住宅改修)
- 歩行器・車椅子(介護保険レンタル可)
- ポータブルトイレ
やっておくこと④ 施設も視野に入れる場合
「自宅に戻るのは難しいかも」と医師に言われたら、入院中に施設の資料請求も並行で進めます。入院中なら時間があるので、複数施設をじっくり比較できる絶好のタイミング 。
緊急時に頼れる窓口リスト
困った時に頼れる連絡先をまとめます。スマホに登録しておくと安心。
| 窓口 | 役割 |
|---|---|
| 病院の医療相談員(MSW) | 入院〜退院まで全般 |
| 地域包括支援センター | 介護保険・地域サービス |
| 親のかかりつけ医 | 医療面の継続性 |
| 親の住む市区町村役場 介護保険課 | 公的手続き |
| 親が入っている保険会社 | 入院給付金 |
| 24時間電話相談「いのちの電話」 | 家族の心のケア |
入院当日の家族への3つのアドバイス
最後に、現場で何百組のご家族を見てきた立場から、3つだけ。
アドバイス① 「自分を責めない」
「もっと早く気づいていれば」「同居していれば防げたのに」と自分を責める方が多いです。親の体調変化は、家族の責任ではありません 。
アドバイス② 「兄弟と仲良く」
入院当日は感情が揺れやすく、些細なことで兄弟ゲンカに発展しがち。「みんなで親を支える」という共通目的を忘れないで。
アドバイス③ 「自分の体調も大事に」
家族は無理しがち。倒れる順番を間違えないで。親の入院を機に、自分も健康診断 を受けましょう。
まとめ|「順番」を守れば、入院当日も乗り切れる
入院当日は誰もがパニックになります。でも、正しい順番 を知っていれば、必要なことを一つずつ進められます。
🍀 入院当日チェックリスト ① 1分深呼吸→病院に容体確認 ② 持ち物リストを準備 ③ 病院到着→医師面談(5つの質問) ④ 入院手続き→本人と面会 ⑤ 家族LINEで7項目共有 ⑥ 「3つは絶対に決めない」を意識 ⑦ 翌日:MSWと包括センターに連絡
そして、退院後を見据えて 「在宅か施設か」を早めに考え始める ことが、家族の負担を軽減する鍵です。
施設も選択肢に入れる場合は、入院中に複数施設の資料を取り寄せて比較を。資料請求は完全無料、電話連絡不要も指定できます。
