親が倒れた|入院当日にやること・やってはいけないこと

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いま、病院にいるのかもしれません。
連絡を受けて、向かっている最中かもしれません。

まず、深呼吸してください。そして、この記事の最初の見出しだけ読んでください。

リハウルフ
こんにちは、理学療法士のリハウルフです。急性期の病院で、倒れた直後のご家族に何度も立ち会ってきました。
いま、この1時間でやることは、3つだけです
  1. 保険証(できればマイナ保険証)を持って向かう これがあるかないかで、支払いが数十万円変わります。後で詳しく説明します。
  2. お薬手帳を探す 治療方針が変わります。親の家に寄る余裕があるなら、必ず探してください。
  3. 今日は、何も決めない 仕事も、家も、施設も。今日決めてはいけません。

あとは、落ち着いてからで大丈夫です。今日1日を、乗り切ることだけ考えてください。

目次

病院へ持っていくもの

最優先健康保険証(マイナ保険証があれば必ずそれを)
お薬手帳(または飲んでいる薬そのもの)
本人の身分証・診察券
できれば印鑑/現金・クレジットカード
介護保険証(持っていれば)
緊急連絡先のメモ
あとで着替え・タオル・スリッパ・イヤホン
眼鏡・入れ歯・補聴器
※病院で指定される場合が多いので、指示を待ってからで構いません

お薬手帳が、なぜそこまで重要か

高齢者は、何種類もの薬を飲んでいることがほとんどです。

血をサラサラにする薬を飲んでいれば、手術の判断が変わります。糖尿病の薬、血圧の薬、それぞれが処置に影響します。「何を飲んでいるか分からない」は、治療を遅らせます。

手帳が見つからなければ、薬局に電話すれば履歴が分かります。かかりつけ薬局の名前だけでも思い出してください。

【お金】これを知らないと、数十万円損します

入院すると、医療費は簡単に数十万円になります。でも、実際に払う額には「上限」があります。

高額療養費制度です。月ごとの自己負担には上限があり、それを超えた分は払わなくていい。上限額は、年齢と所得で決まります。

窓口で「上限額まで」にする方法

方法①|マイナ保険証を提示する

これがいちばん簡単です。マイナ保険証を出せば、限度額を超える分を、そもそも窓口で払わなくて済みます。事前の申請は要りません。

方法②|「限度額適用認定証」を申請する

マイナ保険証がない場合は、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村の国保など)に申請して、この認定証をもらいます。これを病院の窓口に出せば、同じ扱いになります。

リハウルフ
何もせずに退院すると、いったん全額を立て替えることになります。あとで戻ってきますが、数か月かかります。

いったん数十万円を立て替えて、あとで払い戻される——それでも最終的な負担は同じですが、その数か月、家計はきついはずです。

入院手続きの窓口で、この一言を

「高額療養費の限度額適用について、手続きを教えてください」

病院の医事課は、この手続きに慣れています。聞けば、全部教えてくれます。

医師に聞くべき3つの質問

医師の説明は、動転している状態では、ほとんど頭に入りません。これだけは聞いて、メモしてください。

  1. 「いま、どういう状態ですか?」 病名だけでなく、「命に関わるのか」を、はっきり聞いてください。遠慮しないで。
  2. 「これから、どんな治療をしますか?」 手術があるのか。いつ、何をするのか。
  3. 「入院は、どれくらいの見込みですか?」 これが、あなたの今後の予定を決めます。1週間なのか、1か月なのか。仕事の調整も、ここから逆算します。

スマホで録音させてもらってください

「あとで家族に説明したいので、録音してもいいですか」——これは、まったく失礼ではありません。

動転した状態で聞いた説明は、必ず抜けます。兄弟に伝えるときにも、録音があれば正確に伝わります。

【最重要】MSW(医療ソーシャルワーカー)を探してください

ここが、この記事でいちばん価値のある部分です。

多くの病院に、MSW(医療ソーシャルワーカー)という職種がいます。「医療相談室」「地域連携室」といった部署にいる、退院後の生活を一緒に考えてくれる専門職です。

MSWがやってくれること
  • 医療費・生活費の相談(使える制度を教えてくれる
  • 介護保険の申請についての案内
  • 退院後の行き先の相談(自宅か、リハビリ病院か、施設か)
  • 転院先・施設の紹介
  • 地域包括支援センターやケアマネとの橋渡し

そして、すべて無料です。

リハウルフ
私が現場でいちばんもったいないと思うのは、「退院間際になって、初めてMSWの存在を知るご家族」です。

退院の1週間前に相談しても、もう間に合いません。介護保険の申請には1か月かかる。施設探しにも時間がかかる。

入院してから数日以内に、こう聞いてください。

「医療相談室(地域連携室)は、どちらですか?」

看護師さんに聞けば、教えてくれます。この一言が、退院後の生活を大きく変えます。

介護保険の申請は、「入院中」に出してください

これも、知らない方が非常に多い。

退院してから申請すると、1か月間、何も使えません

要介護認定は、申請から結果が出るまで、原則30日かかります。

退院してから申請したら、どうなるか。
介護ベッドも、手すりも、デイサービスも、ヘルパーも、1か月間使えません。

その1か月を、家族が身ひとつで支えることになります。これが、いちばんきつい。

だから、入院中に申請を出しておくのです。退院日に合わせて、サービスが動き出すように。

これも、MSWに相談すれば段取りしてくれます。「退院後、介護が必要そうです。介護保険の申請をしたいのですが」——そう伝えてください。

リハウルフ
状態が落ち着いてから、で構いません。ただし「退院が決まってから」では、遅すぎます。

入院当日に「決めてはいけない」3つのこと

動転しているとき、人は極端な決断をします。私は、それで人生を狂わせたご家族を、何人も見てきました。

  1. 仕事を辞めること 絶対に、今日決めないでください。
    介護離職は、収入を失い、社会とのつながりを失い、そして介護が終わったあとに何も残りません。介護休業・介護休暇という制度があります。まず、それを調べてください。
  2. 実家を売る・引き払うこと まだ、退院後どうなるか分かりません。帰れるかもしれない。不可逆な決断を、初日にしないでください。
  3. 施設を決めること 焦って決めた施設ほど、後悔します。今日は、情報を集めるだけでいい。

今日は、何も決めなくていい。
今日やるべきことは、今日を終えることだけです。

翌日以降にやること

  1. 兄弟・親族に、正確に共有する 録音した医師の説明を、そのまま共有してください。情報がズレると、必ず兄弟間でもめます。「聞いていない」が、いちばんの火種です。
  2. 職場に、状況を伝える 辞める必要はありません。介護休暇・介護休業が使えます。まず人事に相談を。
  3. MSWに会う 数日以内に。これが最優先です。
  4. 高額療養費の手続きを済ませる マイナ保険証がなければ、限度額適用認定証を申請。
  5. 介護保険を申請する(入院中に) 退院後の生活を、ここから逆算して組み立てます。
  6. 地域包括支援センターに電話する 親の住む地域の包括に。これから、いちばん頼りになる場所です。

退院が近づいたら

退院直後の最初の2週間が、いちばん危ない時期です。

入院で体力が落ち、家の環境は入院前のまま。ここで転んで、再入院するケースを、私は何度も見てきました。

介護保険のサービスがまだ十分に入らない時期でもあります。この期間だけ、保険外の自費サービスで集中的に支えるという手もあります。ずっと使う必要はありません。体制が整うまでの、つなぎとして。

自宅に帰れない、と言われたら

「自宅での生活は難しいでしょう」——医師やMSWから、そう言われることがあります。

そのときは、回復期リハビリテーション病院への転院か、施設が選択肢になります。

施設を探すなら、入院中から動いてください。退院日が決まってから探し始めると、選ぶ時間がありません。焦って決めた施設が、いちばん後悔します。

よくある質問

保険証を持っていくのを忘れました
大丈夫です。いったん全額を支払い、後日、保険証を提示すれば払い戻されます。ただし手続きが増えるので、後から届けられるなら、早めに届けてください。
仕事を休めません。どうすればいいですか?
介護休暇(年5日〜)と介護休業(対象家族1人につき通算93日まで)という制度があります。まず人事に相談してください。辞める前に、必ず制度を確認してください。辞めてしまうと、二度と戻れません。
遠方に住んでいて、すぐ行けません
まず病院に電話して、状況を確認してください。命に関わる状態でなければ、慌てて夜行で向かう必要はありません。MSWとは、電話でも相談できます。落ち着いて、動ける日程を組んでください。
入院費は、いくらくらいかかりますか?
高額療養費制度により、月ごとの自己負担には上限があります(年齢・所得により異なります)。ただし食事代・差額ベッド代・おむつ代などは、上限の対象外です。ここは自己負担になります。差額ベッド代は、同意しなければ払う必要がない場合があります。病院の説明をよく聞いてください。
兄弟と、どう分担すればいいですか?
最初に決めてください。「近くに住む人が全部やる」は必ず破綻します。動ける人・お金を出す人・手続きをする人。役割を分けてください。そして、医師の説明は全員で共有する。情報の非対称が、兄弟げんかの最大の原因です。

まとめ|今日を、乗り切ってください

この記事の要点
  • マイナ保険証を持っていく(窓口負担が上限額で止まる)
  • お薬手帳を探す(治療方針が変わる)
  • 医師の説明は録音させてもらう
  • 数日以内に、MSW(医療相談室)に会う
  • 介護保険の申請は「入院中」に出す(退院後だと1か月使えない)
  • 今日、仕事・家・施設を決めない

親が倒れた日のことを、ご家族は何年経っても覚えています。

頭が真っ白になって、何をどうしたらいいか分からなくて、ただ廊下に立ち尽くしていた——そう話す方が、本当に多い。

それでいいんです。今日は、完璧に動けなくていい。

保険証とお薬手帳。医師の話を録音する。そして、何も決めない。それだけで、今日は十分です。

リハウルフ
明日から、一つずつやりましょう。ひとりで抱え込まないでください。

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参考にした情報(公的機関)

※本記事の制度に関する内容は、2026年7月時点の情報にもとづいています。自己負担限度額は年齢・所得により異なります。手続きの詳細は、加入している健康保険・病院の窓口にご確認ください。

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この記事を書いた人

リハウルフのアバター リハウルフ 理学療法士/ケアマネ

理学療法士(2010年取得・16年目)。通所リハビリ、訪問看護ステーション、訪問リハビリ、介護医療院、回復期リハビリ病棟で勤務。うち12年が在宅の現場で、訪問したお宅は1,000件を超えます。『リハコネ式!訪問リハのためのルールブック』監著・編集。2026年に介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得しました。

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